感染管理認定看護師の仕事とは?

日々発展を続ける医療環境の中で、感染対策は医療安全と共に大きな課題となっています。地球規模でみると2002年に中国、香港で重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年に韓国で中東呼吸器症候群(MERS)が、2014年には西アフリカでエボラ出血熱が流行しました。2019年からは新型コロナウイルス感染症が世界中で感染拡大しています。日本においても新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい、流行期には多数の患者さんが病院を受診し、症状に応じて入院治療を行っています。このような状況のなか、病院では通常診療を維持しながら感染症に対して感染予防・管理・監視を行わなければなりません。感染管理認定看護師は、看護の専門職として様々な職種と連携・協力して感染防止対策を病院全体で実施し、安全な医療を提供することで患者さんや病院職員の健康を守ります。

認定看護師を目指したきっかけ

手術室で勤務した14年間は日々が感染対策の実践でした。手術機材の確実な滅菌と消毒、手術室内の無菌的な環境管理、多職種とのチームによる無菌的な手術の遂行によって安全で確実な手術を提供してきました。その後の外科病棟では、手術後の経過を直接知ることができました。時として、手術後の感染で長期の入院生活が必要となる患者さんや場合によっては生命の危機に直面する場面を目の当たりにし、感染管理の重要性を改めて認識しました。そんな時、日本看護協会で感染管理のスペシャリストを育成する感染管理認定看護師教育を行っていることを知り、専門的な知識と技術を深めたいと思い受験しました。

やりがいを感じる時は?

専従の感染管理認定看護師として病院全体の感染管理の仕事をしているので、主に対応するのは、医療現場で直接患者さんに対応する職員です。「薬の効かない耐性菌をもつ患者さんの感染対策はどうすればいい?」、「結核疑いの患者さんが外来受診しますが対応はどうすればいい?」、最近ではもっぱら新型コロナウイルス感染症の対応に関する問い合わせが寄せられます。アドバイスした内容を職員が実践することで、患者さんと職員ともに感染のリスクを負うことなく安心して最良の医療が提供できた時は「良かった」と感じます。

府中病院での活動

病院内の感染防止対策は感染対策チーム(ICT)が中心となり実践しています。主なチームメンバーは医師、薬剤師、臨床検査技師、看護師で、それぞれの専門的な視点で感染防止対策や感染症診療を行います。ICTでは病院内でどのような感染症患者が治療を行っているのか、感染症治療に使用される薬剤の種類や使用量などを監視しています。また、病院内の衛生管理について定期的にラウンドを行ってチェックしています。そのほか、定期的に職員研修を行い、全職員で感染防止対策に取り組んでいます。さらに地域の方々に対して「市民講座」を開催していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で現在は実施できていません。再開できれるようになれば多くの皆さまに情報提供したいと思います。

今後の目標

新型コロナウイルス感染症や季節的に流行するインフルエンザやノロウイルス感染症の蔓延期にはひとつの病院だけではなく、地域ぐるみの感染防止対策が必要となります。泉州地域では28の病院と和泉・岸和田・泉佐野保健所を含めた泉州感染防止ネットワークを発足し、定期的に合同カンファレンスを開催して感染症の流行期における感染防止対策を検討しています。今後さらに高齢者福祉施設を含めたネットワークに拡大し地域の感染防止対策の向上を目指したいと思います。