府中病院では、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・カウンセラー・ソーシャルワーカー・放射線技師・理学療法士など多職種のスタッフがチームを組んで患者さんをサポートしています。
緩和ケア認定看護師は、がんなど病気になった時、患者さんやご家族が抱えるさまざまな苦痛に対し、専門性の高い看護の実践を行う役割を担っています。
私は、病棟看護師としての看護実践に加え、緩和ケアチームで週1回、回診を行っています。患者さん・ご家族の全人的苦痛を理解して、患者さん・ご家族の価値観を尊重したケアの実践や多職種連携を行っています。緩和ケアは特別な誰かから提供されるものではなく、日常診療・ケアにおいてすべての医療スタッフから提供されるケアであるため、スタッフと話し合いながら課題を解決できるよう支援を行っています。また、外来患者さんの告知の場面に同席し、医師から説明された内容が適切に理解できるよう面談を行い、精神的な支援を行っています。がんと診断されることは患者さんにとっては突然に起こる大きな衝撃となり、その衝撃の中で患者さんは様々な意思決定を必要とされます。そういった患者さん・ご家族に寄り添い、一つひとつの事柄の整理を共に行っています。
患者さんは治療における制限を強いられることも少なくはありませんが、病気を患ってもその人らしく生活できるよう積極的治療の時期から最期の時まで、地域に根付いた府中病院だからこそ出来る、切れ目のない支援を行っていきたいと考えています。
がん化学療法看護認定看護師は、がん化学療法における安全・確実な投与管理、副作用ケアなどの実践・指導・相談の役割を持った認定看護師です。
私は現在、血液内科病棟で科長として勤務しています。近年、血液疾患は新しい抗がん剤の開発などで「不治の病」から治る病気へと変化しています。そのため、治療の選択肢が増え、患者さんが治療を選択する機会が増えています。患者さんが納得した治療法を選択でき、安心してその人らしく治療が続けられるようスタッフや多職種と協働しながら意思決定支援を行っています。
また、抗がん剤という特殊な薬剤を扱う治療であるため、スタッフが安全・確実に投与管理ができるよう指導を行っています。副作用対応については、患者さんの苦痛が少しでも軽減できるようスタッフと一緒に考え、実践しています。今後も、スタッフが自信を持ってがん化学療法看護が実践でき、患者さんが安心して治療を継続できるよう支援していきたいと思っています。
また、医師より申請された抗がん薬治療のレジメン作成にも携わっており、医師と協議しながら抗がん薬の副作用の支持療法の決定や、投与方法を検討しています。
さらに近隣の保険薬局薬剤師と抗がん薬治療に関連した情報交換会を実施し、情報共有を行っています。
言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist : ST)は、コミュニケーション、高次脳機能(注意力・記憶力など)、摂食嚥下機能に問題がある方々の、機能維持や回復に対してアプローチをする専門家です。がんの種類や治療法によっては、私たちが介入させていただくことがあります。
たとえば抗がん剤治療の副作用である口内炎や倦怠感が生じて「飲み込み」が難しくなったり、「誤嚥性肺炎」のリスクが高まったりする場合がそうです。食べる事は栄養を摂るだけでなく“生きる喜び”にもつながる重要な問題です。そのため、飲み込みの専門家である言語聴覚士が介入し、ご本人やご家族、関係スタッフと密に相談・連携をとりながら、食事摂取時の姿勢や方法、食事形態を検討します。具体的には「痛みがありなかなか食べる気がしない」という場合には管理栄養士と相談し、冷たくした食事を提供するなどの工夫を行っています。このように可能な限りご本人が希望するものを口から安全に摂取できるようサポートします。また、脳腫瘍など脳機能に影響を及ぼす疾患の場合、「コミュニケーション」「高次脳機能」など、聴く・読む・話す・書くなど、複合的な脳機能の働きが低下する場合があるます。様々な検査道具を用いて評価・判断し、能力を高める練習や代償手段の提案を行っています。また、個々の問題点に合わせた自主トレプログラムを作成し、ご自身でも練習がおこなえるように工夫しています。がん治療では、その日の体調によって様々な能力が変動する場合があります。医師や病棟看護師と密に連携し、問題があればすぐにベッドサイドに素早く駆けるけるフットワークの良さも府中病院言語聴覚士の自慢です。患者さんの想いを汲み取り、一人ひとりに丁寧に寄り添いながら、真摯に向き合っていきたいと考えています。
病気を患うと、身体的な苦痛(治療に伴う副作用、がんによる痛みなど)だけではなく、精神的・心理的な苦痛(不安、不眠、気分の落ち込みなど)も伴います。こころとからだは、自転車の両輪のようにお互いが関連し合っており、どちらか一方のバランスが崩れると、もう一方もうまく働かなくなってしまいます。 特に、がんと診断された時、病気の進行・再発がわかった時、痛みなどの身体的な症状が強い時は、こころが非常に動揺したり、いつも以上にこころに負荷がかかって、気分が落ち込んだり不安が強まります。精神的・心理的な苦痛が強いと、日常生活に支障をきたすこともあります。
心理師(心理士)は、“がんと診断されてから一気に気分が落ち込んでしまった”、“これから自分はどうなっていくのだろう?”、“突然病気が降りかかってきて、一体何をどうしたらいいのかわからず混乱している”、などの患者さんの悩みやつらさを伺い、ともに解決策を考え、気持ちの整理ができるようにお手伝いをしています。また、こころとからだが少しでもリラックスできるように、リラクセーション法(呼吸法:呼吸を整えてリラックスする方法、漸進的筋弛緩法:身体の緊張や筋肉のこわばりを和らげる方法、など)を取り入れています。
不安や悩みを“ゼロ”にすることよりも、それらとどのように付き合っていくか、どうしたら悩みやつらさを和らげることができるか、その付き合い方や方法を患者さんとともに探っていけたらと考えています。
また、当院には緩和ケアチームがあり、心理師(心理士)もその一員として活動しています。医師、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、診療放射線技師、医療福祉相談員、がん相談員、スピリチュアルケアカウンセラーなど、様々な職種が集まり、患者さんが抱えている苦痛を緩和するために日々話し合っています。心理師(心理士)は、患者さんの病気・治療に関する思いや悩みについて、患者さんに携わるスタッフと共有しながらチーム一丸となってサポートにあたっています。
臨床スピリチュアルケアカウンセラー(SCo)は、患者さんやそのご家族への面談を通して、治療過程のなかで抱える心配や不安なお気持ちに寄り添い、ご自身の大切にしている想いや価値観を見つめ直していただくサポートをする専門家です。
スピリチュアルケアの必要性は、医療の中では既に認知されているものの、その言葉自体が聞き慣れず身構えてしまう患者さんがいるのも実際です。しかし、スピリチュアルケアは、何も特別な患者さんにだけ必要なサポートではありません。「一人の人間として、どう生きていくか」を見つめる作業と捉えてもらえれば良いと思います。
私たちは生きていくうえで、思いがけない苦悩や葛藤を抱えることが多々あります。がん患者さんもその一人です。「なぜこのような病気になったのか」「この先どうなるのか」「このまま生きていても家族に迷惑をかけるだけだ」など、がんの発病や治療過程で様々な心の叫び(スピリチュアルペイン)が患者さんやそのご家族を苦しめます。この心の痛みは、身体的な痛みの感じ方や食欲、睡眠等、治療生活に多大な影響を与えます。SCoは面談を通して、患者さんが今感じていることや考えていることをありのまま聴かしていただき、「何を大切に生きていくか、どうやって生きていくことが自分らしくあるのか」を共に見つめ、患者さん自身が自分の人生を歩むお手伝いをさせていただきます。また日頃、医師や看護師に対して抱えている「伝えきれない」「聞きたいけれど聞けない」という思いを代弁し伝えることで、チーム全体が患者さんをより深く理解し関わっていけるよう働きかけています。
面談に準備も心構えも必要ありません。一対一の人間として出会い、貴重な時間を共有させていただくなかで患者さんに寄り添っていきたいと願っています。
(2023年4月時点)
発行団体名 | 資格名 | 取得人数 |
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日本がん治療認定医機構 | がん治療認定医 | 8名 |
日本乳がん検診精度管理中央機構 | 検診マンモグラフィ読影認定医師 | 3名 |
日本看護協会 | がん化学療法看護認定看護師 | 1名 |
日本看護協会 | 緩和ケア認定看護師 | 2名 |
日本病院薬剤師会 | がん薬物療法認定薬剤師 | 3名 |
日本病院薬剤師会 近畿ブロック | 癌化学療法専門薬剤師 | 1名 |
日本医療薬学会 | がん指導薬剤師 | 2名 |
がん専門薬剤師 | 2名 | |
日本臨床腫瘍薬学会 | 外来がん治療認定薬剤師 | 2名 |
日本緩和医療薬学会 | 緩和薬物療法認定薬剤師 | 1名 |
一般財団法人日本心理研修センター | 公認心理師 | 1名 |
公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会 | 臨床心理士 | 1名 |
一般財団法人ライフプランニングセンター(厚労省後援) | がん患者リハビリテーション料算定セラピスト | 19名 |
文化省 | がんプロフェッショナル養成基盤終了 | 1名 |