心不全とは、心臓に何らかの異常があり、心臓のポンプ機能が低下して全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態をいいます。心臓は無理して血液を送り出そうとしますが、こうした状態が続くと体に必要な酸素や栄養が足りなくなり、「息切れ」や「疲れやすい」などの症状が起こります。心不全はひとつの病気ではなく、心臓のさまざまな病気(心筋梗塞・弁膜症・心筋症など)や高血圧などにより、負担がかかった状態に至る“症候群”なのです。

一般的に、心不全は良くなったり悪くなったりを繰り返し、少しずつ心臓の働きが低下して進行する経過をたどります。心不全が悪くなって治療を行い、その後に良くなったとしても、決して「元の状態まで回復した」とはならないのです。そのため、いかに「心不全を悪くさせないか」が重要となります。

心不全患者さんが再入院する原因の上位に「塩分・水分の摂りすぎ」があげられます。塩分の多い食事では、血液中の塩分濃度が濃くなるため、それを薄めるために私たちの体は自然と水分を多く摂取したり、体から水分が出ていくのを制限したりします。その結果、体内に水分が溜まり心臓に負担をかけ、心不全が悪くなるのです。よって、血圧が高くなくても、心臓に負担をかけず心不全を悪くしないという目的で塩分制限が必要です。一般的に、心不全患者さんの食塩摂取量は1日6g未満が勧められています。

※出典:日本心臓財団

紹介患者さんの外来栄養指導(心不全)を開始しました

「毎日の食事をどう気をつけたらいいの?」「今の食事で大丈夫?」といったお悩みはありませんか?

府中病院では、地域のみなさまの食生活をサポートするため、「かかりつけ医」の先生方からご依頼いただいた糖尿病の方に対し個別の栄養指導を行っていましたが、今回新たに、心疾患の方への栄養指導も開始しました。指導を受ける機会のない地域のみなさまに食事療法を知ってもらい、心不全・高血圧症などの基礎疾患をもつ方の病気の悪化や他の病気の予防につなげたいと考えています。栄養指導では、食事療法の基本や個々の生活スタイルに合わせた食事のアドバイスをリーフレットやフードモデルを使用し指導させていただきます。ご希望の方は、かかりつけ医の先生へご相談ください。

ハートノートを用いた心不全指導~入院中から退院後の定期的な指導による継続支援~

入院患者さんにおいては、専門医をはじめ看護師・管理栄養士・薬剤師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士が協働し、退院後の生活を見据えたサポートを行っています。また、ハートノート(※1)を用いて患者さんご自身の自己管理能力を高めるための指導も行っています。心不全の患者さんは、退院後も再入院予防のため、食事の自己管理が重要となってきます。入院中は塩分控えめの病院食を摂取し、退院後の食事療法について理解できていても、実際は塩分摂取過多となる方も多いのが現状です。そこで、ハートノートを導入して心不全指導を行った患者さんについては、退院後も定期的に外来栄養指導を行い、塩分制限などの食事療法を継続していただけるよう支援しています。

(※1)ハートノートとは、大阪市内を中心に運用が開始されている医療機関共通の患者教育資材です。患者さんが毎日の体重・脈拍・自覚症状に対して点数(心不全ポイント)をつけ、その合計点により自分の病状を評価します。基準点を超えれば、早期受診や緊急受診を行うものです。これにより病状の悪化を早期に発見し治療することで、入院を回避できるのではないかと期待されています。また、患者さんの高齢化に伴い、心不全安定後もリハビリテーションが必要となり、慢性期病院での治療後にかかりつけ医へ戻られるケースも増えてきています。その際、このハートノートは、急性期病院・慢性期病院・かかりつけ医が患者情報を共有する事を可能にし、地域ぐるみで心不全患者さんを診療していく有用なツールとなります。