形成外科では、どんな足の病気を診ているの?
足の病気の治療経過
〜やけど、怪我、感染、静脈瘤、糖尿病性潰瘍〜
症例1 : 熱傷
コーヒーを太ももにこぼし、やけどをした方です。皮膚の深い部分まで組織が壊死しており、3度熱傷と診断しました。自然に皮膚がのびて治るには約半年ほどかかることが予想されたため手術を行いました。壊死した部分をすべて取り除き、お腹から皮膚を取って植皮しました。合併症としては植皮が付かないことがありますが、この方は全生着しました。また傷跡は必ず残ります。お腹に採皮した1本線の傷跡がのこります。また術直後は植皮の網目状のきずあとが目立ちますが、術後半年ほどで植皮部分は落ち着き、目立たなくなっています。
術前
術直後
術後半年
症例2 : 外傷による皮膚欠損
高所から転落し、下腿骨折と皮膚欠損がありました。皮膚欠損部分には骨が露出していました。このままでは露出した骨に感染をおこし骨髄炎になるため、早期に手術により血のめぐりのいいもので骨を覆う必要がありました。ふくらはぎから、血管でつながった皮膚と脂肪組織を持ってきて、骨を覆いました。合併症としては移植した組織の壊死がありますが、血流もよく生着しました。感染なく、骨髄炎もおこさず経過しました。この場合、ふくらはぎの後外側に傷跡が残りました。組織をとったところにお腹からの皮膚を植えたためパッチ状の傷跡が残りました。
下腿開放骨折、皮膚欠損
症例3 : 感染による潰瘍
左足から下腿にかけて激しい感染をおこし、溶連菌感染症による敗血症と診断された方です。足背と下腿に大きな潰瘍ができ、壊死した皮膚が付いています。治療としては少しずつ壊死組織を取り除き、潰瘍全体にきれいなお肉が盛り上がるのを待ってから植皮を行いました。面積が大きいため、網目状の植皮にして広げています。合併症としては植皮の壊死や感染、傷跡(採皮したお腹のきず、植皮した足のきず)です。この方は植皮もすべて付き、感染もありませんでした。4年後では色むらが残るもののトラブルなく日常生活を過ごしておられます。
初診時
植皮術後11日
1か月後
4年後
症例4 : うっ滞性潰瘍
数年前から下腿にむくみや潰瘍が生じ、徐々に悪化してきた方です。初診時は足がパンパンに腫れ、下腿の内外側に大きな潰瘍がみられ、多量の浸出液を認め、典型的な静脈瘤による潰瘍と診断しました。しかし動脈の異常がないかなど他の原因がないことを検査で確認しました。感染が落ちつくのを待って、植皮を行いました。合併症は植皮の壊死や感染、きずあとや潰瘍の再発です。足がむくんでくるとまた潰瘍が再発する可能性が高いため、術後はずっと足を圧迫する靴下を履いています。
症例5:糖尿病性潰瘍
糖尿病では、足の感覚が鈍くなり、けがをしても気づかなかったり筋肉などが委縮したりなどによる足の変形(神経症状)、足の血管が狭くなったり詰まったりすることで血の巡りが悪くなる(閉塞性動脈硬化症)、感染を起こしやすくキズが治りにくい(易感染性)などが合併して足の潰瘍ができやすくなります。この方は足の変形から2番目の指の付け根にタコができるようになり、タコに圧迫されて潰瘍を形成しました。初診時潰瘍は骨と骨の間まで深くひろがっていたため、大きく潰瘍を切り広げ洗いました。しかし感染が落ち着かず、2趾を切除し、きずを縫い寄せました。その後も徐々に足の変形が進み、初診から1年半後にさらに1趾の根元に潰瘍ができ、1趾の切断になりました。糖尿病のコントロールも悪く、その後も足のきずを繰り返し、初診から2年4か月後に足の裏に潰瘍が多発し、足の前1/3の切断になりました。一旦改善しかけましたが、全身状態の悪化とともに足も急速に悪化し亡くなられました。足の切断は変形が生じやすく、上手に靴の中敷きや装具などを使用し、新たなきずができないようにする必要があります。しかし最初に書いたように糖尿病による様々な症状によりきずが治りにくい、できやすい、一旦治っても潰瘍を繰り返す可能性が高いです。そしてきずから感染を生じ、それにより全身状態が悪化する可能性も高いです。
(初診時)足の裏にタコができ、そこから奥に潰瘍やポケットができました
皮下に広がるポケットを大きく開放
(初診後4か月)3趾も切断
(初診後1年半)親指も切断
(初診から2年4か月)再び足の裏にただれと深い潰瘍ができました。
傷の部分はすべて取り除き縫合。色は良好
(初診から2年5か月)全身状態の悪化とともに、一旦治りかけた傷も悪化