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SPAIR・FLAIR・STIR の null point(自動計算サイト)

【作成】  北 美保 (府中病院 中央放射線部)
河野 和浩、米谷克也 (同 放射線室)
玉垣大地、谷 知美

反転回復法(IR法)において、水や脂肪の信号がnull pointとなる反転時間(TInull)は、撮像パラメーターに応じて変化します。
本サイトは、SPAIR・FLAIR・STIRなどのIR法において、脂肪もしくは水を良好に抑制するために、種々の撮像条件に応じたnull point (TInull)を簡便に算出できるサイトです。

数式の算出法やシェーマなどの詳細については、論文に記載しております1)2)3)

1) 北 美保, 河野和浩, 米谷克也, 他: SPAIR, FLAIR, STIRにおけるnull point算出法:Part 1. Theory. 日本磁気共鳴医学会雑誌.33(1): 22-32. 2013.
2) 北 美保, 河野和浩, 米谷克也, 他: SPAIR、FLAIR、STIRにおけるnull point算出法:Part 2. 骨盤部SPAIR併用拡散強調像(3T)への応用.日本磁気共鳴医学会雑誌 33(2): 85-91, 2013.
3) Miho Kita, Morio Sato, Kazuhiro Kawano, et al.: Online tool for calculating null points in various inversion recovery sequences. Magnetic Resonance Imaging 31(9): 1631 1639, 2013.

 DOIリンク: http://dx.doi.org/10.1016/j.mri.2013.06.014

計算シートの使用方法

目的の撮像法の欄に、撮像パラメーターのTRもしくはSPAIRパルス間隔(SPAIR TR、数式中ではTR SPAIRとおく)、エコー間隔(ES)、エコートレイン数(ETL)の数値を入力してください。抑制したい組織(脂肪もしくは脳脊髄液)の縦緩和時間(T1値)を、磁場強度に応じて入力してください。

※参考T1値 (msec)
1.5T3T
Fat260 (240~280)340 (320~370)
CSF4500 (4200~4700)4700 (4500~4900)
計算シート(入力用)
各空欄に、T1値(上記の表を参照)や撮像パラメーター(MR装置に表示)を半角で入力してください。その後 ボタンをクリックすると、TI null の欄にTInull計算値が表示されます。得られたTInullの値をinversion delayとしてMR装置に入力してから、撮像開始してください。
なお、SPAIRの場合は、inversion delayの値を変更すると、連動してpackage数やSPAIR TRが変化する場合がありますので、そのような場合には、TRなどの設定を再調整し、SPAIR TRとinversion delayの関係が計算通りとなっていることを確認したうえで、撮像を開始してください。
入力例(3T装置の場合)
(1)SPAIR併用拡散強調像
SPAIR併用2D-TSE法

各空欄にT1値・TR・SPAIR TRを入力

(2)STIR拡散強調像

各空欄にT1値・TR・TEを入力

(3)FLAIR-TSE法

各空欄にT1値・TR・ES・ETLを入力

また、ある撮像パラメーターのもとでのTInullが経験的に分かっている場合は、そのパラメーターを本計算シートに入力したうえで、種々のT1値を試入力して、そのTInullが得られるT1値を探し求めることも可能です。こうして得られたT1値を、みかけのT1値として逆に利用することで、別の撮像パラメーターにおけるTInullを、再び本計算シートで求めることもできます。

特に、SPAIR併用拡散強調像では、SPAIRパルスの反転時間(inversion delay)が脂肪のnull pointに合っていないと、消え残った脂肪が大きくケミカルシフトして画像に重なってしまいます。SPAIR TR=TR÷[1 package当たりのスライス枚数]であるため、スライス枚数やTRを変更すると、SPAIR TRが連動して変化します。SPAIR TRの変化に伴って脂肪のnull pointも変化しますので、本サイトのExcel計算シートに、脂肪のT1値とSPAIR TRを入力して、TInull(脂肪のnull point)を求めてください。

TInullを求める数式

IRパルスにSE系シーケンスを組み合わせた撮像法を、大きく3つに分類し、TInullの数式を導き出しました。最終エコー時の縦磁化をゼロと近似して、パソコンのExcelに入力可能な形にしました(IRパルスにより、完全な反転が得られた場合を想定)。

(1)IRパルスの前にスピンエコーがゼロ個の場合
[SPAIR併用拡散強調像(SPAIR併用SE-EPI法)、SPAIR併用2D-TSE法]

(ここで、TRSPAIRはSPAIRパルス間隔★)
(2)IRパルスの前にスピンエコーが1個の場合
[STIR-拡散強調像(STIR-EPI法)、FLAIR-SE法、STIR-SE法]
(3)IRパルスの前にスピンエコーが複数個の場合
[FLAIR‐TSE法(T1-FLAIRならびにT2-FLAIR)、STIR‐TSE法、SPAIR併用3D‐TSE法、等]
★SPAIRパルス間隔(SPAIR TR)の解説

SPAIRパルスは、fat selectiveの180°反転パルスですが、slice non-selectiveであるため、ボリューム全体の脂肪を反転します。したがって、2Dマルチスライス撮像においては、1 package(あるいは1 concatenation)当たりのスライス数をnとすると、各スライスを撮像するたびに、すなわちTRの間にn回、 SPAIRパルスが脂肪全体を反転します。
SPAIRパルスが印加される間隔(SPAIRパルス間隔、 あるいは、SPAIR TR)を TR SPAIRとおくと、TR SPAIRは次式で与えられます。

ここで、n=全スライス数/package数(ただし、single-shot TSE法の場合は、 TR SPAIR=TR となります)。