心不全は、様々な心臓病が原因となって、息切れやむくみなどの症状を認める状態(病状)のことをさしますが、最大の問題点は、一度発症すると再発を繰り返し、寿命を縮めてしまうことです。多くの方は、がんが最も怖い病気と思われていますが、実は心不全を発症してからの寿命は、がんを発症してからの寿命とほぼ同じか、がんの種類によっては、心不全の方が短いこともあり、決して油断できない病状なのです。
そこで、心不全を再発しないためには、原因となった心臓病に対してお薬を中心とした適切な治療を行い、病状を安定さることが基本ですが、安定した状態を維持する(再発しない)ためには、患者さん自身の体調管理(自己管理)も非常に重要です。日々の血圧・体重測定、薬を忘れずに飲む、減塩に注意した食事、適度な運動、介護など社会支援の調整などが必要となります。そのため、心不全患者の指導は、医師だけではなく、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、社会医療福祉士、臨床心理士など様々な専門的知識を持った職種が連携して行います。しかし、社会の高齢化により、心不全患者はますます増加しており、個々の患者さんが抱えている問題も多様化したため、各職種も心不全診療全般の知識を持ったうえでより質の高い専門的な指導を行うことが必要となりました。
そこで、日本循環器学会は、2021年度から「心不全療養指導士」という新たな資格認定制度を開始しました。この制度は、医療に関わる国家資格をもった者が、心不全診療に必要な基本的知識や技能を習得したことで認定されます。現在、府中病院では、看護師、管理栄養士、薬剤師の合計8名が心不全療養指導士の資格を取得し、幅広い専門知識を持ちながら、入院や外来での心不全患者指導を行っています。
府中病院で活躍する「心不全療養指導士」をご紹介します!
医療従事者の皆さんへ
退院した心不全患者さんの生活の場は、自宅や施設などの地域になります。心不全の知識があれば、日常生活でみられたささいな体調変化に気づき、早期に適切な対応をとり、心不全悪化による入院を避けることができます。今後も高齢心不全患者さんが増加することが予測されています。
病院スタッフだけではなく、訪問看護師、クリニックや施設スタッフが心不全療養指導士となり、病院と地域が連携して心不全患者さんのケアにあたることが求められています。
今後ますます必要とされる資格である「心不全療養指導士」にぜひチャレンジしてください。
日本循環器学会WEBサイト「心不全療養指導士」のページをぜひご覧ください。
心不全センター長 花谷 彰久