2020年から初期臨床研修の外来研修は必須になりました。臨床推論能力をつけるには外来研修が不可欠です。多くの研修病院は、初期研修医は初診外来研修していませんでしたが、府中病院では2007年から2年目研修医が5-8人程度/日の外来診療に携わっています。
多くの初期臨床研修医がこれを当院を研修病院として選んだ理由として挙げています。
ここでは、具体的な外来研修の流れを見てみましょう。

当科をローテート中の医師1年目研修医は、病棟勤務で時間が取れそうなときに、指導医から外来に呼ばれます。

① 診察開始前に、問診票から担当症例の情報を指導医と検討します。

指導医「今日は『熱が下がらない』とかかりつけの先生から紹介状をもらって来院した若い男性を担当してもらおう、どう?」
研修医「若年者の熱といえば風邪が多いですが、長引いているようなので、伝染性単核球症ではないでしょうか?」
指導医「確かにありそうやね、まだ情報が不足しているので、いくつかの疾患を候補を思い浮かべながら、医療面接と身体診察かな。時間はかかってもOSCEで学んだように基本に忠実に丁寧にやることが大切だよ。」

② 身体診察まで行い、一度患者さんには診察室から退室してもらい、指導医にプレゼンテーションします。

指導医「頸部リンパ節腫脹が乏しいという点が、伝染性単核球症としては合わないということだね。」
研修医「血液検査で異型リンパ球の出現や肝機能症状を確認したいと思います。」
指導医「確かにいい考えだけど、今日38℃の熱があるのに、脈拍が1分間に76回しかないんだけど、薬もいろいろ処方されている」
研修医「あ!比較的徐脈ですよね」
指導医「鑑別はいくつかあるけど、検査をする前に、一緒に診察してみようか」

このように1年目研修医は指導医と共に診察を進めながら、コミュニケーション能力と臨床推論能力を磨いていきます。

2年目には研修医は、一人で診察をします。鑑別診断、抗菌薬の選択、入院の必要性を含む治療方針についての相談が主体となります。総合診療センターを受診される方の疾患は多彩で、一見するとよくある病気に見えても、しばしばpitfallが隠れています。そのため、総合診療センターの指導医は常に研修医が「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」をしやすい環境を作れるように配慮しています。
診断・治療の困難な事例や診療上のclinical pearlsについて、総合診療センターの週2回のカンファレンスで、研修医と8人のスタッフ(2019年9月時点)とが意見交換を行います。