新着情報

理学・作業・言語のご紹介

みんなで「楽しく」リハビリテーションしましょう!

地域リハビリテーションの理念であるその人らしく安全に生き生きとした生活ができるように、最良のリハビリテーションのための技術を提供していきたいと考えています。

取り組み・特徴

リハビリテーションとは?

1.リハビリテーションとは何をすること?

はじめに

病気やけがを患ったり、年齢を重ねたりすると、生活するための能力が低下してしまう場合があります。そうすると、自分にとって大切なことができなくなり、いままで住み慣れたところで幸せに過ごすことが難しくなるかもしれません。

「病気」や「けが」自体は治療により回復する可能性がありますが、「体の動かしづらさ」「体力の低下」「気持ちが落ち込む」「記憶力が落ちた」など、生活するための能力や、自分らしい生活は、安静にしているだけでは取り戻すことが難しい場合があります。ましてや、「年齢を重ねること」によって生活する能力が低下してしまうことは人間である以上、避けることはできません。そのために、いわゆる「リハビリ」が必要になってきます。

リハビリテーションの意味

では、「リハビリ」とはどういう意味なのでしょうか?私たちが、普段健康だと感じているときには、食べること、トイレに行くこと、友人や家族と交流すること、好きなことを楽しむこと、働くこと、不安なく温かい布団で休むことも当たり前のように感じられます。しかし、ひとたび、病気になったり、けがをしたりすると、そのような当たり前のことがとても大切であることに気付かされます。

「リハビリ」とは「リハビリテーション」といい、ラテン語のRe(再び)Habilis(取り戻す)が語源といわれています。日本語では「全人間的復権」という意味で、簡単に言うと「人間らしく生活する権利を取り戻す」ということです。

リハビリテーションとは、住み慣れたところで、自分らしく安全にいきいきと暮らせるように保健・医療・福祉・介護および地域住民を含め生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織が協力し合って行う「ありとあらゆる取り組み」のことを指します。

意外に誤解をされていますが、「リハビリ」は機能訓練という狭い意味でありません。リハビリテーションは単なる機能訓練だけにとどまらず、いろんな方法があり、みなさんを含めたいろいろな人々で力を合わせることが必要なのです。

2.チーム医療とリハビリテーション

リハビリテーションのためのいろいろな方法

では、住み慣れたところで自分らしく幸せに生活するリハビリテーションの目的を達成するための方法にはどんなものがあるのでしょう?

できる限り体や脳の機能を高めましょう

まず、体力や筋力など「身体機能」や、記憶力や判断力など「脳の機能」など、機能を高めることが大切です。そのための方法を学んでいただき、ご自身やご家族に実践していただくことも大切です。このような機能訓練が「リハビリ」と感じられますが、「リハビリ」はそれだけではありません。

活発な生活を心がけましょう

体や脳の機能がよくなれば、生活は活発になります。そして地域でいろんな人と交流し、活動することができます。それとは逆方向に、いきいきとした生活を継続することが、逆に体や脳の働きをよく保ち、健康の維持に役立ちます。このようにせ活発に生活することが大切です。

こころの問題にも取り組みましょう

たとえば、ストレスが強く、気持ちが不安でいっぱいだったり、気が滅入ったり、自信がなくてもいけません。そのような状態では、眠れなくなったり、動きたくなくなったり、食欲が落ちたりします。結果として健康な生活には繋がりません。そのような「こころ」の問題に対するリハビリテーションも必要です。

生活環境を見直したり、使える社会資源を利用したりしましょう

さらに、環境を工夫することも大切です。たとえ身体の機能が低下しても、それを補ってくれる手すりや車椅子など、さまざまな福祉機器が活用することで、まるで目が悪くなったときに眼鏡をかけるように解決できる場合があります。さらに、ご友人やご家族と楽しく交流できる機会や、出掛けたい場所という環境が生活を活発にするために重要です。いろいろな社会制度や、協力してくれる仲間を見つけることも大切です。

いきがいとなるものを見つけましょう

いわゆる「生きがい」と呼ばれているように、生きる目的や希望を見出すこともリハビリテーションのためには大切です。なぜなら、生きがいがないといろんなことに頑張れないからです。自分はどんなことをするのがすきだろうか?どのようなことが生活の中で大事だろうか?と考えてみていただくことも大切です。

良い部分も伸ばしましょう

このように、リハビリテーションの目的を達成するためには、悪い部分を良くすることはもちろん大切なのですが、「よい部分」に気付き、「よい部分」を活用し、「よい部分」を増やしていくことで、行えることの可能性は大きく広がるという発想の転換も大切です。悪い部分を良くしていくことはたしかに大切なのですが、そればかりに目がいき、自信を失ってしまうことは、健康や回復にマイナスになってしまうからです。

このようにリハビリテーションの目的を達成するためには、身体を鍛えることはもちろん、いろいろな側面を考える必要があります。

いろんな職種がチームとしてリハビリテーションを行います

ここで、私たちの生活に置き換えて考えてみましょう。

例えば、ご飯を食べるという日々の活動を思い浮かべてください。ご飯を食べるためには、「もうお昼か」「今日はこれを食べよう」と判断する脳の働きが必要です。そして、台所まで歩いて移動し、椅子に座る運動が必要です。

また、ご飯を食べている間、疲れないような体力が必要です。そして、箸を細かく操作して、食べ物を口に運ぶ手の動きが必要です。そして、歯ですりつぶして肺に入らないように上手に「ごっくん」する能力も必要です。

さらに、そもそも「食べたい」という気持ちが必要です。気分が落ち込んでいたり、ストレスがたまっていたりすると、そのような気持ちが起きにくいものです。このように「こころ」や一日の生活リズムが整っていることも必要です。さらに、一人ぼっちで食事をするよりも、気の合う友だちや家族とすてきな雰囲気を味わったほうが、食事がより楽しくなります。このように環境も大切です。もしかすると、食事のためにインスリンという薬を注射したり、薬を一緒にのむ必要があるかもしれません。塩分やたんぱく質など栄養を工夫したほうが健康にもっと良いかもしれませんから、専門家の協力が必要な場合もあります。また、ヘルパーさんや配食サービスなど、社会的な制度を利用することで食事がとれるようになるかもしれません。そして、いつか旅行にでかけて美味しいご飯をみんなでたべたいなぁという目標や希望があれば、毎日の生活がもっと楽しくなるかもしれません。

このように普段何気なく行っている生活も、いろんな要素が絡み合っていることが分かります。一つの素晴らしい家やビルも一つの専門家で建てることはできません。それと同様に、私たちの幸せな生活には色んな要素が関わっています。ですからいろんな専門職がチームとしてリハビリテーションを行っているのです。私たち、理学療法士、作業療法士、言語聴覚療法士は、そのリハビリテーションの目的を達成するための専門家であり、リハビリテーションの方法1つというわけです。

目標をもつことが大切です

さらに、リハビリテーションを上手にすすめるためには、ご本人とご家族の協力が不可欠です。みなさんの理想とする生活をお聞かせください。このチームワークを良くするためには、目標が定まっていてみんなで共有できていることが何よりも必要なのです。その意味も込めて、私たちは患者様ではなく、健康で幸せな生活をに目指していく「パートナー」と呼ばせていただいています。

みなさんの目標と、私たちが提供できる技術・知識をよくすり合わせたうえで、納得できる目標に向かって共にがんばっていきたいと考えています。そのため、私たち理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の専門性をご理解いただくことで、よりみなさんに活用していただきたいと考えています。

理学療法士の役割

理学療法士Physical Therapist(PT)は、失われた身体の機能を回復させるために、以下の方法で治療を行う「身体づくり」、生活の「動作」の専門家です。みなさんが「リハビリ」という言葉からイメージされるのは、もしかしたらこの理学療法かもしれません。

運動療法により正しい動きの学習と指導を行います

運動は体力や筋肉をつけるなど身体機能を回復させる効果があります。それ以外にも、運動にはさまざまな効果があります。例えば、認知症を防ぐためには運動が大切です。運動をすることは実は記憶や頭の働きを良くすることにも効果があると言われています。また、がんを治療するための薬の副作用による体の衰えや、倦怠感、気持ちの落ち込みを防ぐためにも運動が強く有効であると言われています。他にも、心臓のご病気になられた方や呼吸に問題がある方にも、運動の効果が認められています。このように、身体の状態に合わせた運動の量や仕方を理学療法士は処方することができます。

物理療法により、痛みや麻痺を治療します

温熱、超音波、水、電気刺激など物理的手段をもちいて治療を行うことができます。たとえば、ベッドから起きられない間でも体や脳が衰えないように、電気の刺激を加えたりすることや、関節のこわばりを温熱や超音波で緩和したりして、動きをスムーズにし、痛みを減らすような治療をしています。

基本動作能力の改善を行います

学療法士は人間が生活するうえで、非常に大切な、寝返って、起きて、座って、立ちあがって、歩くという基本的な動きを練習します。これらが上手く行えるようになるには、関節のどのような動きや部分に問題があるのか、どのような筋肉が弱いのか?など、身体の仕組みの中でどのようなところに問題があるのかを見極めて治療を行っています。

このように理学療法士は、身体の基本的な動きの問題を解決することで、自立した生活を支援する専門家です。

当院の理学療法の特徴

当院は、急性期総合病院のため、さまざまな疾患の患者さんに対して、早期から理学療法を行っています。理学療法の技術は、体力や筋肉を付ける以外にもさまざまな効果が示されてきています。転倒予防し、二次的な障がいを防ぐことや、身体を動かさないことによる精神的な問題、認知症の予防にも運動の効果が示されています。

また、当室では、近年注目を集めている心臓リハビリテーションや、がんのリハビリテーションにも専門の資格をもつ理学療法士を中心に積極的に介入している点が特徴です。

作業療法士の役割

作業療法士Occupational Therapist(OT)は、その人にとって意味のある作業(生活行為)ができるようにすることで健康で心穏やかな生活を送れるようにする専門家です。しかし作業といわれても、なかなかピンとこないのではないでしょうか?まず、OTの簡単な歴史を紹介したいと思います。

作業療法の歴史

古代ギリシャの時代より、人間がさまざまな「作業」を行うことが治療になることが発見されて、利用されてきました。作業療法の源流となったのが、18世紀のフランスで精神科の医師であるピネルが行った、「道徳療法」という治療法です。彼は、鎖で繋がれていた精神科の患者さんの鎖を解き放ち、「作業」をさせました。音楽を聞いたり、演奏したり、農作業をしたり、物をつくったりさせたのです。そうすると精神症状が落ちついていきました。そのような作業を用いた人道的な治療が作業療法の原型になりました。

その後、第一次、第二次世界対戦で身体に障がいを負った兵士の治療のために作業がもちいられるようになりました。このように精神の問題だけでなく身体の問題にも作業療法が用いられるようになりました。

このように作業をすると患者さんが健康になることを発見していた、アメリカの精神科医、整形外科の看護師、芸術家、建築家、ソーシャルワーカー、元結核患者さんが集まり、作業をすることを治療にする専門家である「作業療法士」という専門職を作ることになりました。では、作業(Occupation)とは何で、どうして効果があるのでしょう?

作業と健康との関係

作業とは私たちが毎日の生活で行っているいろいろな活動(生活行為)のことで、諸説ありますが、大まかに「身の回りのこと」「働いたり、何かを生み出したりすること」「楽しむこと」「休むこと」から構成されています。

①身の回りのこと

食事、身だしなみ、着替え、排泄、お風呂に入ることなど

②働いたり何かを生み出したりすること

調理、洗濯、買い物、仕事、ボランティア活動など

③楽しむこと

温泉、音楽、カラオケなどいわゆる趣味のこと

④休むこと

睡眠、ぼんやりすること、瞑想、マッサージなど

健康で心安らかな生活のためには入院中であってもこれら作業が「よい具合」で行えている必要があります。作業が健康に及ぼす影響は、私たちの体に置き換えてみると良く分かります。

「身の回りのこと」をすることは大切ですが、週7日、朝から夜まで身の回りのことだけをしていると、なんのために生きているのかな?と気持ちが落ち込んでくるはずです。ですから自分の能力を発揮して、誰かの役にたっているいう感覚を生み出すために「働いたり、何かを生み出すこと」も必要です。しかし、週7日働いてばかりだと、うつになり、過労死してしまいます。かならず「休むこと」が必要です。かといって、「休むこと」が多すぎると、筋肉や体のあちらこちらが衰えてきてしまいます。

働いて休んでの繰り返しの生活もつらいものがあります。ときどき「楽しむこと」が必要です。

このように、私たちの24時間365日続いている、生活の中の作業(生活行為)が「よい具合」に行えていることが、私たちの健康やこころに重要な要素であることがおわかりいただけると思います。それができていない状態を「作業機能障がい」と呼ばれています。このように作業機能障がいと健康には関係があることが明らかになっています。

作業が私たちの生活を活発にしています

みなさんが外に出かけ、身体を動かす目的はなんでしょうか?たとえば「買い物」という作業を考えてみましょう。買い物という作業のおかげで、スーパーまで歩くという「運動」になります。また何を買おうかとワクワクすれば「楽しみ」となります。この材料で何をつくろうかしら?と考えれば「頭のトレーニング」になっています。包丁で皮をむき、切ることで握る力や指先の感覚が衰えずに済みます。そして買い物にでかけることで、友人と会話をして楽しんだりすることにもなります。また「買い物に出かけないといけない」という役割があるおかげで、朝に身支度をし、決まった時間に起きる習慣がでます。外に出かけることで、体内時計が修正されて、夜眠りやすくなります。夜眠りやすくなれば免疫力も高まり、転倒しづらくなり、気持ちも落ち込みにくくなります。作業があるおかげで、私たちの生活は習慣化されて、体の健康状態にもよい影響を与えています。しかし、年齢を重ねたり身体を動かしづらくなると、ますますこのような作業を行う機会が失われてしまうのです。このように、私たちの生活を組み立てて活発にしてくれる要素には「作業」が大きく関わっています。

作業と学習との関係

小学校や中学校などでも教科書を覚えるだけでなく、実際に工作や音楽、動物や植物の飼育、体操、料理などさまざまな作業が教育に用いられています。作業をすることで、技能が高まりますし、それに関する知識も身につけることができます。また、自分はこれくらいできるという自信や、自分はこういうのが得意だということを発見することに繋がります。作業をすることは実際に生活していく力を付けるために大切な要素の一つと言えます。

大切な作業は人によって違う

作業とは私たちが、「できるようになりたいこと」、「できる必要があること」、「できることが期待されていること」です。そして、それはひとりひとり違います。例えば、「楽しむこと」であっても、人によっては、コンサートに行くことかもしれませんし、日曜大工をすることかもしれません。しかも、やり方もひとりひとり異なります。食事でも、こたつに座って召し上がられる方、テーブルで椅子に座って召し上がられる方もいるでしょう。こたつに座って召し上がられる方は、床にすわって食べる練習をする必要があります。このように作業療法では習慣や価値観、興味のあること、生活環境のような個別性を大切にして行っています。

なぜ作業ができなくなるのか

作業ができない原因も様々です。体が動かないだけでなく、気持ちが落ち込んでしまったり、それを行う「意味」を失ってしまったり、できる環境がなかったりしてもうまく作業ができません。あるいは、他のことが忙しすぎて、行う時間がない、他の人に「そんなことやってなんの意味があるの?やっちゃだめ」と認められていないことが原因の場合もあります。このように原因を考えながら、意味のある活動ができるようにしています。

作業療法が行うこと

体や脳の働きを良くするために作業を用います

麻痺した手を回復させるためには、目的のある活動を難易度に合わせて繰り返し練習する方法が推奨されています。また認知症のある方には、もともと大切にしていた活動をすると記憶力が改善するという報告もあります。このように作業を行うことで身体や脳の機能回復をはかっています。

作業を行う技能を高めるために作業を用います

例えば、野球やサッカーのスポーツでも、筋トレや柔軟体操は非常に重要ですが、それだけでは技能は高まりません。技能を高めるためには繰り返しできるようになりたい作業を練習する必要があります。作業療法では身の回りのことや、家事や仕事に関係する作業を繰り返し練習し、安全に効率よく行う技能を高めます。

また、自宅に帰ってどのくらい上手に生活ができるのか?を確認するためにはどうすればよいでしょう。そのためには、できる限り実際の自宅に近い環境で、同じようなシチュエーションで確認することが必要です。このように技能を確認するために作業を行う場合もあります。

不安や抑うつなど「こころ」の問題に作業を用いて解決します

病気を患うと気持ちの落ち込みがみられることがあることが分かっています。また慣れない環境や、苦痛によって強いストレスを受けることがあります。これら「こころ」の問題は体にも影響を及ぼすことが示唆されています。これらに対しては適切なストレスへの対処法が行えていることが健康に大切です。作業療法では、楽しみやこころが安らぐ活動をもちいてこれらの問題に対処します。

また、なにもせずに1時間椅子に座っているのは苦痛ですが、音楽、手芸など好きなことをして過ごすと、あっという間に時間が過ぎてしまうものです。このように作業を上手く使うことで、起きて動きたいという意欲を高めることもできます。

福祉用具や自助具の様に環境を変えることで作業をできるようにします

できないと思われていることも、環境を変えることで解決できる場合が少なくありません。たとえば、手が届かなくても「リーチャー」と呼ばれている「福祉用具」を用いれば、腰を痛めず物を取ることができるようになります。既成品でなくても、「自助具」と呼ばれる道具を自作することも作業療法士は得意です。

また、ベッドの上で過ごすことが多いと「床ずれ」ができてしまいます。当院では看護師と連携し、どのような姿勢やマットで、どのようなクッションを使えば床ずれを予防できるのかという部分にも対応しています。

このように福祉用具や自助具をうまく適応することも行います。必要があれば、ご自宅に訪問し、安全で活発に生活するための環境について患者さんと一緒に検討することも行います。

当院の作業療法の特徴

根拠に基づく作業療法の実践;Evidence-Based Occupational Therapy

作業療法の知見は日々進化しています。ガイドラインや最新の知見を取り入れながら常に最良の作業療法を行えるように、Evidence(根拠)に基づく作業療法を意識しています。

作業に根ざした実践;Occupation-Based Practice

作業に根ざした作業療法を行っています。作業に根ざすとは、身の回りのこと、生産的活動、余暇、休息といった具体的な活動を評価し、直接介入をしていく方法です。例えば、料理が上手くできるのか?どんなところが危険なのかは、記憶力や筋力を調べるだけではわかりません。実際に行う場所で、実際に行う方法で、実際に行ってもらうことが必要と考えます。洗濯物や調理、趣味など実際に作業を「経験」してもらうことで、ご自身の生活する力を正しく認識し、自信をもって、これからの生活をイメージしてもらいやすくなります。そのために、できる限り実際に作業が経験できる環境を整えていくことを意識しています。また、作業療法にはMOHO、OTIPMなどさまざまな理論が存在し、それらを活用しています。

当室では、AMPSと呼ばれる作業療法の評価法を採用しています。AMPSとは約20万人のデータに基づき国際的に標準化された観察型のADL/IADL評価法で、どの程度上手に生活できるのかを、統計学的に数値化できる評価法で専門的な資格が必要で、当院では5名のAMPS認定評価者がいます。AMPSでは実際に、お味噌汁を作る、パンにバターをぬる、食器を洗って乾かす、服を着替えるなどの作業を実際に行ってもらい、資格をもった作業療法士が観察し、点数化します。これにより、自宅で1人で生活できる能力があるか?以前よりも生活する能力が向上しているのか?を数字を用いて客観的に評価し、訓練や退院の判断に活かすことができます。

こころとからだのリハビリテーション

こころとからだは、関係していることが分かっています。例えば脳卒中を患ったり、がんの治療により、気持ちが落ち込んだり、不安が強くなることがあることが分かっています。こころが元気でないと、いろんな訓練をがんばることが難しいのです。これら、こころの問題にも、作業療法をとおして貢献していきたいと考えています。

他職種連携・生活行為向上マネジメント(MTDLP)

作業療法の場面で、うまく作業ができていても意味がありません。病棟での生活や、退院なさってからもずっと健康で自分らしく生活できるためには、「こういうことができるようになりたい」という目標を、皆で共有し、協力できていることが理想と考えています。日本作業療法士協会が開発した生活行為向上マネジメントシート(MTDLP)というツールを活用し、新人教育に役立てています。

言語聴覚士の役割

言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist;ST)は、コミュニケーション、高次脳機能(注意力・記憶力など)、摂食嚥下に問題がある方々の、機能回復をお手伝いします。

コミュニケーション能力を高めます

コミュニケーションには、ことばによるものと、表情、身振り、イントネーションなどのことば以外のものがあります。中でも言語聴覚士がとりわけ多く扱うのがことばによるコミュニケーション障がいです。ことばを使うためには、「脳」で理解し、伝えたい内容を思考し、「声帯・舌・唇」を動かして音を作ることが必要で、これらのいずれかの場所で問題が生じることによって起こります。

具体的に言語聴覚士が取り扱う問題には下記のものがあります。

失語症

脳卒中などの病気や、けがにより脳の言語を処理する部分が損傷を受け、聴いたり読んだりした内容を理解する、伝えたい内容を思い浮かべて話したり書いたりすることが難しくなった状態です。

「聞く」「話す」「読む」「書く」の4側面を、検査バッテリーを用いて評価し、個々の状態に合わせた訓練を立案し、施行していきます。
音声や構音の障がい

病気やけがなどにより口腔器官の運動麻痺や器質的な問題などが生じ、声量や声質の変化、口腔や舌などの構音器官が障がいされ、言葉を発することが困難になった状態です。音声障がい、構音障がい、吃音などがあります。

「考える・覚える」などの脳機能を活性化します

脳は、ことばを処理する以外にもたくさんの機能が備わっています。その日あったことを記憶すること(記憶力)目の前のことや周囲に注意を向け集中すること(注意力)適切な行動を判断すること(判断力)などです。これらは脳の各部位が複雑な連携を取り合って機能しています。これら人間が持っている複雑な脳の機能は「高次脳機能」と呼ばれ、脳卒中など脳の病気やけがで障がいされた状態を「高次脳機能障がい」と呼びます。

言語聴覚士は、様々なテストを行い、どのようなことが難しくて、どのようなことに優れているのかを明らかにし、障がいに応じた訓練をすることで脳を活性化し安全に生活が送れるよう機能の回復をはかります

食べる楽しみを支援します

食べ物や飲み物は、口からのどにかけて非常に精密な連携運動によって食道へと送り込まれています。老化や脳卒中、器質的損傷、長い間寝たきりでいることによって、飲み込む力が低下すると、食べ物が口の中からこぼれる、うまく噛めない、飲み込めない、むせてしまうなどの症状が出てきてしまいます。これらを「摂食・嚥下障がい」と呼びます。摂食・嚥下障がいがあると、人間の生きる楽しみの一つである「食べる喜び」が損なわれるばかりか、食べ物や飲み物が肺に入ってしまい、誤嚥性肺炎を引き起こしたり、窒息したりすることもあり、生命の危機につながります。

言語聴覚士は口やのどの動きの状態を調べたり、食事のしかたを観察したり、きちんと肺ではなく食道に食べ物が送られているかを「嚥下造影検査」などで調べます。

そして、一口で食べる分量や、食事のときの姿勢、適切な食事の形(トロミがついているか、食べ物が細かく刻まれているか)などを調節します。また、食べたり、飲み込んだりするのに関係する筋肉や器官の訓練や、飲み込むための「ごっくん」という反応を高めるための訓練を行います。また、安全に食べたり、飲んだりできる方法を、介助する人やご家族などに指導させていただくことも重要な役割の一つです。

嚥下造影検査を、医師、言語聴覚士、放射線技師が連携して実施しています。

そして、一口で食べる分量や、食事のときの姿勢、適切な食事の形(トロミがついているか、食べ物が細かく刻まれているか)などを調節します。また、食べたり、飲み込んだりするのに関係する筋肉や器官の訓練や、飲み込むための「ごっくん」という反応を高めるための訓練を行います。また、安全に食べたり、飲んだりできる方法を、介助する人やご家族などに指導させていただくことも重要な役割の一つです。

このように言語聴覚士は、コミュニケーション能力や複雑な脳の働きを改善させたり、安全に食べたり飲んだりすることを支援する専門家です

医師とのカンファレンスの様子

嚥下造影検査の様子

スタッフ紹介

全52名(理学療法士26名・作業療法士12名・言語聴覚士12名・事務員2名)   2022年5月現在

発行団体名資格名取得人数
一般財団法人ライフプランニングセンター(厚労省後援)がん患者リハビリテーション料算定セラピスト19
右記3学会3学会(日本呼吸器、胸部外科、麻酔科学会)合同呼吸療法認定士5
公益財団法人テクノエイド協会福祉用具プランナー1
厚生労働省医療従事者向け認知症対応力向上研修終了2
日本AMPS研究会AMPS(Asessment of Motor and Process Skills)認定評価者3
日本A-one研究会A-one(The ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation )認定評価者2
日本園芸療法学会園芸療法士2
日本介護支援専門員協会介護支援専門員2
日本介護福祉士協会介護福祉士1
日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション指導士5
日本理学療法士協会脳卒中認定理学療法士3
運動器認定理学療法士1
日本言語聴覚士協会認定言語聴覚士(失語・高次脳機能障害)1
文化省がんプロフェッショナル養成基盤終了1
福祉住環境コーディネーター2級4

採用ページはこちら

当部門の採用情報はこちらからご覧いただけます。

診療実績

学術業績

取り組み・特徴

対象疾患

当院では、下記疾患により生じた障がいに対して、当院の医師による指示(診察)のもと、治療訓練を行います。

  • 脳梗塞や脳出血等の脳血管疾患
  • 大腿骨頚部骨折や椎間板ヘルニア等の整形外科疾患
  • 心筋梗塞や心不全等の心大血管疾患
  • がん(内科、外科)
  • 慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患
  • その他の疾患治療に伴う廃用状態
1.急性期・早期リハビリテーションはなぜ大切?

当院は急性期総合病院であり、病気やけがの治療開始とともにすみやかにリハビリテーションを実施しています。急性期では、身体の動かしづらさ、痛み、気分のしんどさ、慣れない環境など、さまざまな要因によって、活動が制限されやすい状況になります。安静にする必要がなくなっても、生活が不活発な状態がつづくと身体やこころにさまざまな悪影響が出てきます。

たとえば、筋肉や体力が衰えるだけでなく、骨がもろくなり、心臓の機能や呼吸の機能も低下してしまいます。また、認知機能とよばれる記憶力も低下します。そればかりか、気持ちの落ち込みなど精神面にも悪影響を及ぼします。これらは、「廃用症候群」あるいは「生活不活発病」と呼ばれています。ですから、医師の指示のもと、なるべく早期から、活発に生活ができるように、理学療法・作業療法・言語聴覚療法を受けていただくことが重要と考えています。とはいえ、理学療法、作業療法、言語療法を早期から行う場合、入院直後は病気の状態が不安定な場合があります。医師や看護師など他職種と体の状態について情報交換し、ガイドラインなど科学的な根拠をもとに、健康を悪化させないように「リスク管理」を行い、活発な生活を取り戻せるように努めています。

2.様々な疾患に対する理学療法・作業療法・言語聴覚療法

理学療法・作業療法・言語聴覚療法は、さまざまな病気を患われた方に行われています。では、具体的にどのようなことが行われているのでしょう?その一部を紹介したいと思います。

①心臓リハビリテーションはなぜ大切?

心臓リハビリテーションとは、心筋梗塞・狭心症・慢性心不全、開心術後・大血管疾患、閉塞性動脈硬化症の患者さんに、運動を含めた生活習慣の見直しと改善をはかり、病気に対する正しい知識を得ることで再発を予防し、生活の質を上げるためのプログラムです。そのために、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士などの医療スタッフがチームを組み、患者さんの治療をサポートします。

心臓リハビリテーションでは、循環器疾患をお持ちの患者さんに運動の実施および指導を行っていますが、運動をすることだけが心臓リハビリテーションではありません。スムーズな社会復帰や疾患の再発および悪化を予防するため、運動療法のほか、食事療法や禁煙を含む生活習慣の改善にも取り組んでいきます。

その中で、理学療法士が行っている主なものが運動療法です。運動療法は、身体全体またはその一部を動かして、症状の軽減や機能の回復を目指す治療法で、持久力訓練(主運動)、筋力トレーニング、関節可動域訓練(ストレッチ)などが含まれており、以下のような効果が証明されています。

  • 心肺機能がよくなり、体力が改善します。
  • 筋力・体力がつくと、身体活動時にかかる心臓の負担が減ります。
  • 血栓ができにくくなり、冠動脈の再狭窄やバイパス閉塞を予防します。
  • 動脈硬化の進行をさまたげ、原因となる危険因子を改善します。
  • 自律神経が安定し、ストレスも解消します。
  • 不整脈が減ります。
では、どのような運動がよいのでしょうか?
運動の頻度は1回30~60分、週3~5回程度が理想的です。
運動の強さは、自分の能力の5~7割程度、つまり、やや息が切れ、軽く汗ばむ程度、「楽である」~「ややきつい」と感じる程度がよいとされています。

次に、さらに詳しい運動療法の進め方をご紹介させていただきます。

準備運動

運動を行う前に血圧・脈拍などを確認し、体調が万全かどうか評価します。その後に十分な準備運動(軽い運動やストレッチなど)を行い、急な運動における事故を予防します。いよいよ運動を開始します。

持久力訓練(主運動)

歩行、軽いジョギング、自転車、水泳、エアロビクスなどのように、全身をリズミカルに動かす運動がよいとされています。これらの運動は、身体が酸素を取り込みながら行うことができるので「有酸素運動」(エアロビック・エクササイズ)と呼ばれています。逆に、重量挙げ、懸垂(けんすい)、腕立て伏せ、短距離全力疾走などは、酸素を取り込まずに行われるので「無酸素運動」と呼ばれ、心臓に負担をかけるので好ましくありません。

筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)

筋力が低下している患者さんには筋力トレーニングを行うことで、運動能力の改善、より少ない生理・心理学的負担で身体活動をできるようになります。また、冠危険因子の改善に効果的であるといわれています。筋力トレーニングは、上肢は最大筋力の30~40%、下肢は50~60%の負荷で8~12回を1~2セット行うようにします。頻度は週に2~3回で改善がみられます。

呼吸筋トレーニング

呼吸筋トレーニングにより、吸気筋力の改善・持久力の改善に効果があるといわれています。必要な場合にトレーニングを導入するようにいたします。

バランス訓練や動作訓練

バランスが低下している患者さんにとって、バランスに対する訓練を行うことは、転倒予防になります。日常生活動作訓練も含め、必要な場合に行います。

整理体操

ゆっくりとした運動やストレッチなどの整理体操を行い、運動後の低血圧やめまいなどの事故を予防します。終了後に再度、血圧・脈拍等確認します。

大切なこと

  • 具体的な運動処方(運動頻度・強さなど)は個人の条件によって異なりますので、医師の指示や理学療法士にご相談ください。
  • 過度の運動は危険です。運動は正しく自分に合った方法で行うことが大切です。
  • 長期間にわたって継続するようにしましょう。
  • 運動療法は、理学療法士にご相談ください。
②がんのリハビリテーションはなぜ大切?
がんのリハビリテーションの目的

医療の進歩とともに、がんを患っても、治療により健康でいられる期間が長くなってきました。一方で、治療により体の体力が低下したり、不安な気持ちが続いたり、仕事を続けられなくなったり、生きる目的を失ってしまうなど、生活する能力や生活の質が低下してしまう場合が多いことがわかってきました。このような問題に対して、がんを患った方に対するリハビリテーションが注目されてきています。がんのリハビリテーションの目的は、生活する能力を維持し、生活の質の改善をはかるためにいろいろな職種がチームとして行うことです。では、私たちの部署ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。その一部を紹介させていただきます。

理学療法士の役割

がんの治療には手術や化学療法、放射線治療などがあります。特に化学療法や放射線治療後には、身体の機能が低下したり、倦怠感や、気持ちの落ち込みや、不安が強くなったりすることがあります。理学療法士による運動トレーニングは、これら治療による副作用を軽減させ、身体機能を維持することに効果が示されています。

大切な点は、体が弱ってしまってから運動をしていては遅すぎるということです。体が弱くなってしまう前、つまり治療中やそれ以前からしっかりと体の状態を把握し、可能な範囲でしっかりと運動を行う事が大切です。なぜなら、一度落ちてしまった体力を回復させるには、かなりの努力と時間が必要だからです。

血液がんを患われ、化学療法や造血幹細胞移植をうける患者さんは、感染症を引きおこさないように、クリーンルームで過ごされる場合があります。そのような場合でも、エルゴメーターと呼ばれる自転車のような機械で、体に合わせた適切な有酸素運動や、筋力トレーニングの指導を行わせていただいています。

作業療法士の役割

がんの治療過程では、身体の機能の低下だけでなく、精神面の問題や生活のしづらさが現れることが分かっています。そのような場合には作業療法の出番です。

気持ちの落ち込みや不安は、生活を不活発にさせ、生活の質を低下させてしまうため、音楽や、呼吸法などのリラクゼーションが推奨されています。作業療法では、いろいろな手芸や工作、芸術活動を用いて、楽しみながら入院生活の活発化をはかっています。また薬の副作用で手の力が落ちてしまった場合には、手指の機能を高める練習を行うことや、退院後の生活を見越して、生活しやすい環境を整えたり、生活する方法の練習も行います。

③認知症のリハビリテーションはなぜ大切?
認知症のリハビリテーションとは

どなたでも年齢を重ねると、もの覚えが悪くなったり、人の名前が思い出せなくなったりします。しかし認知症は「老化によるもの忘れ」ではなく、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊れるために起こる症状や状態です。認知症の原因はさまざまですが、最も多いのはアルツハイマー型認知症、次にレビー小体型認知症、血管性認知症です。また、認知症ではなくても、MCI(軽度認知障がい)と呼ばれる方も増えてきています。 日本における65歳以上の認知症有病率は2025年には5人に1人、2040年には4人に1人と推計されています。

また、病院という慣れない環境や、治療は認知症を有する方にとって、不安や混乱を招きやすく、それがBPSDという行動・心理症状(妄想・徘徊・抑うつ・興奮・暴力など)を引き起こし、治療を円滑に行えなくなっていまいます。このように、認知症を有する方は増加することが予測され、病院での入院生活が困難になる場合が多くなってきます。では、認知症やそれに伴うBPSDを予防していくためにはどうしたらよいでしょうか?

理学療法士の役割

認知症の予防には運動の習慣が大切でガイドラインでも推奨されています。また体の能力に変化を及ぼしますので、理学療法では適切な運動を処方させて頂き、転倒や体力の低下など二次的な障がいを予防していきます。

作業療法士の役割

認知症の症状であるBPSDには、なるべく入院前となるべく変わらない環境や生活リズムが大切です。作業療法では、入院前の生活やどんな活動を行っておられたかをお聞きし、体の状態にあわせて作業ができるようにします。具体的には、身の回りのことをうまく行えるよう、環境を整備したり、音楽やカラオケなどなど趣味の活動を支援したり、家事なども行います。このようにBPSDや記憶力の改善には音楽や馴染みのある大切な活動などの有効性が示唆されています。

言語療法士の役割

言語療法では、いろいろなテストを使って記憶力を調べたり、脳の働きを高める訓練を行ったりします。また認知症は飲み込む能力にも影響を及ぼすためその評価や訓練も行います。

認知症とケア

近年、認知症は「関わり方」によって症状が改善することが明らかになっており、パーソン・センタード・ケアやユマニチュードなどといった方法が提案されています。いずれも、その人らしさや、尊厳を大切にした「愛」のある関わりが大切であり、当法人の「愛の医療と福祉の実現」という理念とも一致しています。

認知症のリハビリテーションにはご家族様を含め、地域の方々の認知症に対する正しい理解や社会的なサポートが欠かせません。私達は、看護師などいろいろな専門職や、ご家族様と協力しながら、愛のあるリハビリテーションを実施していきたいと考えています。

④呼吸リハビリテーションはなぜ大切?
呼吸リハビリテーションの目的

呼吸は人間にとって非常に大事なものです。食べ物を1日とらなかったとしても、すぐさま大事には至りませんが、呼吸が数分できないだけでも、体に大きな影響を及ぼします。呼吸は鼻や口から取り入れた酸素を、肺を通して体の中に取り込み、逆に体の中の二酸化炭素を吐き出すことで「ガス交換」を行っています。酸素は体のエネルギーを作り出すために非常に大切です。では、呼吸リハビリテーションではどのようなことが行われているのでしょうか?

さまざまな病気によって呼吸することが、うまくできないと少し体を動かしただけでも、息切れがして十分な運動ができなくなってしまいます。そうすると、生活が不活発になり、ますます筋肉や体力が衰えるため、さらに生活が不活発になるという「悪循環」が生じます。そこで、呼吸リハビリテーションによって「息苦しさ」を解消し、不安や気持ちの落ち込みを防止し、活発で質の高い生活を取り戻すことが大切になってきます。

呼吸リハビリテーションは、いろいろな職種がチームで取り組みます。なぜなら、もちろん病気自体の治療や、お薬を使うことが大切ですが、それらと運動を組み合わせるとより効果があったり、栄養のことも考える必要があったり、「こころ」の問題も関係していたり、社会の制度を利用することも合わせて必要だったりするからです。また、近年では呼吸する力が低下しないように予防することや、病気が悪くならないように患者様自身が病気や体の知識をつけてもらって自主的に取り組んでもらうことも大切だと言われてきています。つまり、私達のパートナーであるみなさまもそのチームの一員というわけです。

理学療法士の役割

では、理学療法ではどのようなことが行われるのでしょうか。その一部分をご紹介します。

―― 胸郭を柔らかくします

息を上手にするためには、胸郭と言われる部分がうまく膨らむことが大切です。風船が硬いとうまく空気が入ってくれないようなものです。理学療法は、手でその動きを補助したり、首や胸の周りの筋肉や関節を柔らかくしたりすることによって呼吸をしやすくします。

―― 呼吸の仕方を指導します

皆さんは呼吸の仕方を意識したことはあるでしょうか?このような「呼吸の仕方」によって上手に体の中に酸素を取り込むことができます。例えば、肺の空気の通り道が狭くなってしまうご病気の場合は、口をすぼめて吐くことで効率よく息ができるようになります。また、腹式呼吸が良い場合もあります。また、動きにあわせてタイミングよく息を吐くことなども大切です。このように状態にあわせた適切な呼吸法を指導します。

―― 痰を吐き出しやすくする

痰があると、空気の通り道のじゃまをし、うまく「ガス交換」ができない場合があります。理学療法士は痰を吐き出しやすくするためにみじかく息を吐き出す「ハフィング」を行ったり、痰が吐き出しやすい姿勢を整えることを行います。

―― 筋力を鍛える方法を指導します

息苦しい状態が続くと、生活が不活発になり筋力が低下します。筋力が低下すると、動くためにより多くの「酸素」が必要になるという悪循環におちいります。そのため筋力を鍛えることは非常に大切です。呼吸の苦しくならない筋力訓練を指導します。

―― 適切な運動を指導します

息苦しい状態の時に、運動をするのは非常に難しいと思われるかもしれません。しかし、運動は「ガス交換」の効率を高めて生活を活発にしてくれる他にも、気持ちの落ち込みも減らし自信を高めてくれます。その場合、つらい運動をするわけではありません。「楽」「ちょっとしんどい」程度の運動が適切です。適切な運動の量を指導するのが理学療法士の得意なところです。

―― 起きたり、座ったり、立ったりを練習します

ご自身の力で呼吸ができない場合、「人工呼吸器」と呼ばれる機械が助けてくれます。このように機械が呼吸を助けてくれている間も、理学療法が必要です。なぜなら、寝ている姿勢や動かないことは、さらに呼吸する力を衰えさせ、痰を吐き出す力が減ってしまうからです。理学療法士は、体の状態に合わせて、医師や看護師、薬剤師、臨床工学技士などと協力し、座ったり、立ったり、自転車を漕いだりする練習を行います。人工呼吸器の助けが必要なくなってからも、すぐさま活動ができるように、治療の極めて速い段階から関わっています。

作業療法士の役割

では、作業療法は呼吸リハビリテーションでどのような役割を担うのでしょうか?

生活の行う作業の種類によって、必要なエネルギーは違います。座って行う活動よりも、立って歩くことが必要な作業のほうが、息切れがしやすいわけです。また、手を頭の上に上げたり、体を屈めたり、手を連続して曲げ伸ばしする作業でも息切れがしやすいと言われています。具体的には洗濯物や、掃除機がけなどの作業がそうです。作業療法では、どのような生活行為が難しくなり、どうすれば楽に上手に行えるようになるのかを一緒に見つけていきます。なぜなら、なるべく重要な活動をしっかりと行うことが体の能力を維持に非常に重要だからです。それと同時に、気持ちの落ち込みと体の衰えは相関関係にあることが示唆されています。息がくるしくなるとご自身にとって大切な活動ができなくなり、自信を失ってしまいます。そうするとますます動く機会が減ってしまう悪循環に陥ります。

このように、作業療法ではその方にとって重要な意味のある生活行為を経験してもらい、生活の方法を再学習してもらったり、自信を高めてもらったり、新たな楽しみを見つけてもらうことで、生活を活発にすることを目指します。作業療法士が関わることで、呼吸状態や生活の能力や死亡率が低下することも報告されています。

言語療法士の役割

言語療法士はどのように、関係しているのでしょうか?呼吸がうまくできない原因の一つには「誤嚥性肺炎」があります。飲み込んだ食べ物が上手に胃にはいらず、肺の方に入ってしまうことが原因の1つです。ですから誤嚥性肺炎を防ぐためには、食べ物が上手に飲み込めるかどうかが大切になってきす。

では、食べ物を上手に飲み込むためにはどうすればよいのでしょうか?

うまく食べられない原因にも様々です。まずは、その原因をしっかり調べることが大切です。例えば、食べるスピードや、一口量が原因の場合もあります。また、食べる環境が騒がしく気がそれて集中できないことも誤嚥の原因になります。入れ歯がうまく合ってないことで、しっかり噛めずムセてしまうこともあります。飲み込む筋肉や神経の反射が起こりにくいことで、気管に食べ物が入ってしまう場合もあります。そのような場合には、食事形態を変えたり、飲み物や食べ物にトロミをつけたり、食べる姿勢を変えたりすることで、安全に食事がとれるようにします。

また、呼吸状態が良くない時期には、食べること自体が負担になってしまいます。食べる量を調整し、高カロリー食品を利用し、短時間かつ少量で必要な栄養がとれるように工夫します。

⑤脳血管疾患のリハビリテーションはなぜ大切?
脳血管疾患のリハビリテーションの目的

脳は非常に複雑な器官です。脳は人間の生命維持、運動や感覚、言葉や判断したり記憶したりすることなどに関わっており、脳卒中などにより、脳にダメージを受けるとその場所によって、様々な問題が生じます。例えば、運動に関係する場所がダメージを受けると手足が動かしづらくなります。また言葉に関係する場所がダメージを受けると、言葉を理解したり話したりすることが困難になります。また口や喉の動きが悪くなり、食事をとる力が落ちてしまう場合もあります。では、このような脳の障がいに対してどのように理学療法、作業療法、言語聴覚療法は行われていくのでしょうか?

早期離床とリハビリテーション

脳卒中ガイドラインでは、なるべく早くからリハビリテーションを行うことが、機能回復や二次的な障がいを防ぐために重要だと言われています。しかも、その訓練量はなるべく多いほうがよいことが示唆されています。近年、脳がどのように働いているのかが、科学の進歩とともに明らかになってきました。脳の神経細胞が訓練や活動量によって「変化」することがわかってきたからです。 しかし、病気になってからすぐに活動や訓練をすると非常に難しいように思われます。そのため医師や看護師を含むさまざまな職種との連携を私達は非常に重要と考えています。なぜなら、病気が悪化しないかどうかを早くから見極めることができれば、より早期から訓練ができるからです。しかも、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訓練した内容を、看護師が病棟の生活に活かすことができれば、より活動量を増え、機能が回復し、生活する能力が改善しやすいからです。

理学療法士の役割

理学療法では、早期から基本的な動作ができるように支援しています。具体的には、麻痺のある手足の動きを促したり、電気刺激を行い神経や筋肉が弱らないように配慮したり、装具などを活用して歩行練習などを行ったりします。

作業療法士の役割

作業療法では、生活で行うさまざまな活動を早期から行えるように支援しています。手足の麻痺や高次脳機能障がいによって、生活する能力が低下してしまいます。そのため、より安全に行える方法を練習したり、生活がしやすいように手すりを付けたり、車椅子の調整を行ったりします。また自助具といわれる道具を導入したりします。麻痺のある手を回復するためには、目的のある活動を繰り返す行う方法が推奨されており、難易度にあった作業を行っています。

言語聴覚士の役割

脳の言語領域が障がいされると、言葉がうまく使えなくなる状態になり、これを「失語症」といいます。「話す」「聞く」「読む」「書く」ことが難しくなります。言葉がまったくわからない外国へ放り出されたような状態と言えます。症状を評価し、個々に合わせた訓練プログラムを立案し、コミュニケーション能力の向上をはかります。

また、顔や舌の筋肉を動かすための神経が障がいされると、言葉がひずんだり、うまく発音がしづらくなります。このような状態を「構音障がい」といいます。このような場合には、口腔・顔面の体操をしたり、苦手な音を発音する練習を行います。また脳には注意力や記憶力、判断力のように複雑な情報を処理する能力があり、その機能がうまく働かない状態を高次脳機能障がいといいます。日常生活でも、障がい物に気が付かない、予定をこなせないなどの症状がでることがあり、安全に生活することを邪魔します。言語聴覚療法ではそれらの状態を調べ、訓練をすることも行っています。

脳卒中とこころの問題

また、脳にダメージを受けた後は体だけでなく、こころにも変化を与えます。これは「脳卒中後のうつ;PSD」といいますが、気持ちが落ち込むほうが多いと言われています。また、手足が動きにくい人ほどその傾向にあることが示唆されています。このように気持ちが落ち込むと生活する能力が低下してしまうので、こころの問題にも注意する必要があります。このような問題にはお薬も重要ですが、理学療法士による運動や、作業療法士による趣味活動の援助がガイドラインで推奨されており、これらにも積極的に取り組んでいます。

⑥整形外科のリハビリテーションはなぜ大切?
整形疾患のリハビリテーションの目的

日本では高齢化が進んでいます。介護が必要になる要因には、転倒・骨折や関節疾患、脊髄損傷などの運動器疾患が2~3割を占めており、脳血管疾患や認知症よりも多いのです。ということは、骨折を予防し、関節の具合が悪くならないようにすることが、健康的な生活を続けるために大切なのです。このように運動器の障がいにより移動する機能が低下した状態を「ロコモティブシンドローム」と呼ばれています。

骨折の原因には骨粗鬆症といって骨がもろくなってしまうことと、転倒してしまうことなどがあります。骨折する前から、これらを予防することが大切です。骨を強くするためには、栄養も大切です。そして、適切な運動の習慣をつけ、活発な日常生活を送ることが、足の筋肉や骨を強くし、バランス能力が保たれるため大切です。

当院では骨や関節の疾患に対してもリハビリテーションを行っています。

理学療法士の役割

理学療法士は、関節や骨の形状、筋肉の場所など人間が動く時のバイオメカニクスに精通しています。手で身体や関節の動きを確かめて、上手く動きを誘導したり、問題点を評価したりすることが得意です。また、患部を温めたり、冷やしたりして痛みをとる物理的な治療法も用います。また、より痛みが少なく、安全で、効率的な動きを引き出すために、適切な動作の練習を指導させていただきます。いずれも、回復の状態にあわせて実施していきます。

作業療法士の役割

関節が曲がりにくいと、お布団で寝たり、お風呂に入ったりすることが難しくなります。また、足を骨折された場合、金属の関節に置き換える手術をされる場合もあります。そうすると、関節が外れてしまう可能性があるため、今まで生活していた方法を変える必要が出てきます。そのように日常の生活行為に介入するのが作業療法士です。必要があれば、関節を曲げずに物が取れる「リーチャー」という道具や、足を曲げずに靴下が履ける「ソックスエイド」と呼ばれる道具などを提案し、より安全に生活が送れるようにします。このように作業療法士は、痛みなくできるという経験を積んでもらい、生活を活発にしていきます。

また、大腿骨頚部骨折では、理学療法や作業療法は、歩行獲得を早め、術後6ヶ月の生存率を高めたという研究や、運動機能や生活の質を高めるという報告がなされており、入院中だけでなく退院後のリハビリテーションともに有効であるという科学的根拠が示されています。退院後も継続したリハビリテーションを受けていただくために、他職種連携もしっかりと行っています。

⑦痛みとリハビリテーションとの関係
慢性痛について

痛みというと、頭痛や歯の痛み、腰の痛みなどが思いつくと思います。痛みには薬を使うことが大切ですが、リハビリテーションとどのような関係があるのでしょう?

痛みにはいろいろな分類がありますが、急性痛と慢性痛に分けられます。急性痛はケガや炎症などによって痛みの原因分質がでるために痛いのですが、慢性痛は原因がなくても痛みが残る場合を言います。原因が無い場合の痛みとはいったい何でしょう? 人間には、痛みを軽減させる回路が備わっていることが明らかになってきました。そして気持ちが落ち込んでしまうと、その働きが弱まり痛みを感じやすくなってしまいます。また、痛みのせいで身体を動かさないと、その動きに関係している脳の領域は変化し、より痛みを感じやすくなってしまいます。そのようにして、「動くと痛いのでじっとしている方がマシだ」と考えてしまうと、よけいに体が弱くなり、気持ちが落ち込み、脳が変化し、痛みが改善されないというわけです。もちろん、痛みを我慢して無理に動くのはいけません。そうではなく、「痛みなく動ける」という経験を積み重ねていくことが大切なのです。痛み無く動けることで自信がつき、生活が活発になっていきます。そうすると、体の力がつき、さらに自信が付いてきます。そうすると、脳の神経も活発になり、痛みにも良い影響を及ぼすというわけです。ただし、薬で適切にコントロールしていくことや、安静にしておかないと行けない痛みもあるので注意が必要です。

理学療法では、体の筋肉を鍛えたり、軟らかくしたり、温めたり、冷やしたりすることで痛みなく動けるように運動を調節していきます。作業療法では、痛みの起きない方法で生活ができるようにすることで、生活する自信を高めたり、活動する意欲を高めていくことで、痛みの軽減につなげていきます。このように、リハビリテーションを通じて、痛みとの向き合い方を変えていただくことが、健康的な生活を取り戻すことに大切なのです。

理学療法士の役割

理学療法士は、関節や骨の形状、筋肉の場所など人間が動く時のバイオメカニクスに精通しています。手で身体や関節の動きを確かめて、上手く動きを誘導したり、問題点を評価したりすることが得意です。また、患部を温めたり、冷やしたりして痛みをとる物理的な治療法も用います。また、より痛みが少なく、安全で、効率的な動きを引き出すために、適切な動作の練習を指導させていただきます。いずれも、回復の状態にあわせて実施していきます。

⑧転倒を防ごう!

介護が必要になる要因には、転倒・骨折や関節疾患、脊髄損傷などの運動器疾患が2~3割を占めており、要介護状態にならないためには、転倒を予防することが大切です。しかし、人間は生きている以上、ケガをするリスクは0にはできません。しかし、適切な取り組みを行えば、その可能性を20~30%低下させることが明らかになっています。転倒に関連する要素には以下のものがあります。

①年齢

特に80歳を超えると転倒のリスクが高くなるので、環境や体の機能に注意が必要です。

②転倒歴

過去1年間で転倒したことがあると、その後1年間で転倒するリスクが2.8倍になります。

③視力

新聞の字が読めないと転倒リスクは2倍、4m先の人の顔を判別できないと1.6倍に増えます。

④薬剤の副作用

睡眠薬 抗不安薬 抗うつ薬、降圧剤を服用している場合は注意が必要です。

⑤認知、心理機能

認知症がある人、うつのある人は転倒しやすくなると言われています。

⑥筋力

足の筋肉が弱いほど転倒しやすくなります。

⑦関節の曲がりやすさ

股関節、膝関節、足関節が硬いとバランスが悪くなり転倒しやすくなります。

⑧環境

転倒の3~5割を占めています。段差や滑りやすい床、手すりの有無に注意が必要です。スリッパよりも靴の方が転倒リスクも低下します。

理学療法によって足の力を鍛えて、関節をしなやかにし、バランスを高める訓練をすることで、転倒の可能性をへらすことができます。また、記憶力や注意力といった能力も転倒には影響をしています。言語療法では、それら脳の働きを適切に評価し、訓練をすることで転倒のリスクを減らすことができます。

環境は、転倒の30~50%に関与していると言われています。床や照明を適切な状態に修正したり、障がい物や段差を解消したりすることで予防ができます。作業療法では、どのような環境であれば安全に活動ができるのか、作業を行い評価をしたり、環境を整えることで転倒のリスクを減らしています。また、気持ちの落ち込みも転倒リスクを高めるのです。作業を行うことで通じて気持ちを元気にすることも行っています。

このように生活環境を整えることが、転倒予防にはとても大切なのです。当院では、退院される前にスタッフがご自宅に伺い、環境や生活のアドバイスを行う「退院前訪問」も積極的に行っています。また、入院中の療養生活においても、ベッド柵や歩行器などを工夫し転倒しにくい環境を整えてきます。作業療法士が環境調整を行うことで、転倒のリスクが軽減するという研究も報告されています。

3.改善活動(QC活動)

QC(Quality Control)サークル活動は、職場の第一線で働く人々が継続的に製品・サービス・仕事などの質の管理・改善を行うことです。よりよいリハビリテーションを実施するために、毎年テーマを決め、サークル活動を行っています。

平成29年度 カルテ業務の効率化とワークライフバランスの改善

カルテ業務の効率を向上させることで、カルテ記載内容を充実させながらも仕事にかかる時間を減らすことに挑戦しました。

平成28年度 看護とリハ専門職の連携強化

看護部がみて、患者さんのADL向上や転倒のリスクを軽減させるための有益な情報伝達の方法について改善に取り組みました。

平成27年度 入院時訪問指導のシステムの確立

回復期リハビリテーション病棟において、患者さん個別の生活環境や習慣、価値観に応じた効果的な訓練ができるように、入院時訪問のシステムを確立させる取り組みを行いました。

平成26年度 リハビリテーションの見える化

リハビリテーションを受けられる患者さんが、リハビリを行う意義や方法について理解していただきやすいように、パンフレットや掲示板の改良を行いました。

平成25年度 自主トレーニングのパンフレット作成

ご自宅に退院されてからも、効果的な自主トレーニングができるように、パンフレットを作成する取り組みを行いました。

平成24年度 十分な訓練量を確保するための代診システムの構築

担当セラピストが休みの日でも、他のセラピストが代わりに訓練を行うための、効率的なシステムを開発し、患者さんが受けられる訓練量の向上に挑戦しました。

4.教育・安全
キャリアパス

当院を含め、当法人の全てのリハ関連職を対象とした教育システムを運用中です。スタッフが主体的に参加でき、平等で有意義な教育機会を経験できるようなシステムを目指しています。新人教育カリキュラム、法人リハ部門研究・研修グループ、法人本部主導の社会人研修などによって、積極的にキャリアアップに取り組める環境を作りたいと考えています。

新人教育

当院を含め、当法人では、4つの病院、3つの介護老人保健施設、3つの介護老人福祉施設で、平成28年4月現在、121名のPT、70名のOT、30名のSTが働いています。 新卒のスタッフに対し、約2ヵ月のカリキュラムを組んで法人施設合同の新人研修を実施しています。

法人リハ部門 研究(勉強会)グループ

法人リハ部門として、施設・職種横断的な研究・勉強会グループを立ち上げ、専門分野の知識・技術の習得をめざします。 平成28年3月現在、10グループが存在し、グループごとに活動をすすめ、年3回の全体研修で数グループずつ活動成果を発表します。 研究(勉強会)グループへの参加は経験2年目からとし、活動可能であれば複数グループへの参加も可能です。参加するグループの選択は自由(個人責任)としています。

安全

それぞれのセラピストが関わった事象を、電子媒体を活用し、部署全体で共有できるシステムを利用しています。それをもとに毎月、セラピスト全員でカンファレンスを実施し、安全な理学療法・作業療法・言語聴覚療法の実施につなげています。分析にはRCA分析を採用しており、事象の真因を分析することで、業務改善に部署全体で努めています。また日頃からセラピストのリスクセンスを向上させることが、安全な理学療法・作業療法・言語聴覚療法の実施には重要です。そのための取り組みとしてeラーニングや、シミュレーションを通した勉強会の開催を行っています。

事例検討会、伝達講習

理学療法室、作業療法室、言語聴覚療法室それぞれ月1回、事例検討会を実施しています。また、学会や講習会の伝達講習も積極的に実施しています。さらに、それぞれの専門職合同での事例検討会も実施しています。セラピスト1人だけでは得られない、幅広い視点を共有したり、異なる専門職の共働や相乗効果が得られるように努力しています。

5.地域・他職種連携
  • 地域連携パス
  • 多職種カンファレンスの実施
  • 委員会への参加

院内の各種ワーキングチームや委員会にも参加し、リハビリテーション専門職として、役割の一端を担っています。

地域連携カンファレンス
ケアマネジャーさん等を中心として、地域の通所施設関係者、訪問看護師さんやヘルパーさんなどと当院スタッフが集まり退院前に在宅生活をイメージした話し合いを行っています。
「地域連携カンファレンス」という呼称を使用することで、地域の関係者の参加が促進されることを期待しています。
また、可能な限りケアマネジャーさんの司会進行で、当院スタッフがそれを補佐するかたちをとることで、より円滑な在宅生活への移行をめざしています。
安全対策ワーキングチーム

部署内医療安全に関する対策を検討、各スタッフへの周知、院内各部パトロールなどに参加しています。

感染管理ワーキングチーム

部署内感染管理に関する対策を検討、各スタッフへの周知を実施しています。

がん診療運営委員会

がん診療運営における総合的な対策の検討に参加しています。

緩和ワーキングチーム

緩和医療に関する諸事情について検討。対象者への回診に同行し、疼痛緩和やポジショニング、運動などについて助言しています。

褥瘡委員会

褥瘡管理に関する諸事項を検討。褥瘡発生者対象の回診に同行し、エアマットや車椅子クッション選定、ポジショニングなどについて助言しています。

NSTワーキングチーム

栄養管理に関する諸事項を検討。回診に同行し、摂食状況を言語聴覚士の立場から他スタッフに伝達しています。

嚥下ワーキングチーム

嚥下管理に関する諸事項を検討。現在、誤嚥性肺炎予防のため口腔ケアマニュアルを作成しています。

呼吸器ワーキングチーム

呼吸器管理に関する諸事項を検討。人工呼吸器装着者対象の回診に同行し、体位変換やポジショニングなどについて助言しています。

排尿ケア委員会

排尿ケアとは、下部尿路機能障害を有する患者さんに対して、病棟でのケアや他職種チームの介入による下部尿路機能の回復のための包括的排尿ケアのことです。排泄に関わる動作や生活習慣について助言しています。

認知症ケア委員会

認知症のある患者さんの生活が制限されないように配慮し、より早く住み慣れたお住まいに帰れるように関わっています。