肺がん
肺がんとは
肺がんは、気管や気管支、肺胞の一部の細胞が、がん化(悪性化)したものです。肺がんは、確実に進行して周囲組織を破壊し、血液やリンパに乗って全身に広がっていきます。早期の発見なら手術などで根治できる場合もありますが、進行肺がんの場合、現時点では、抗がん剤で根治することはまず不可能です。生存期間の延長などを目的として、抗がん剤治療などを行います。
肺がんの原因は、タバコ関連が有名ですが、不明なことも多いです。
症状
長引く咳や痰、血痰、ぜーぜー言う(息切れ)、声がかすれる、顔が腫れる、などがありますが、 これらは、かなり進行した時の症状です。早期はもちろん、進行していても、無症状のまま健診で発見されることも多いです。
検査と診断
胸部CTなどの画像検査と気管支鏡検査や喀痰検査などの病理診断をして確定診断を行います。しかし、全身麻酔で肺切除までしないと診断できないこともあります。
胸部CT
- X線を使って体の内部(横断面)をみる画像検査です。
- がんの大きさ、性質、周囲の臓器への広がりなど、X線検査より多くの画像情報を得るために必須の検査です。
- 治療の効果判定や経過観察でも施行します。
※造影剤を使用する場合、重篤なアレルギー反応が起こることがあります。アレルギーの経験のある方は必ず申し出てください。
気管支鏡検査
- 幅5ミリ位の細い内視鏡を用います。痛くはありませんが、咳が強く出ますので、麻酔液を噴霧・散布しながら、喉から気管・気管支へと進めていきます。
- 気管・気管支の中の観察と、病理診断(がん細胞の有無やがんの種類を顕微鏡で調べる病理検査をすること)のための検体採取が目的です。
- がんを疑う病変の生検(米粒半分位の組織をちぎり取ってくること)、細胞診(ブラシでこすり取って来ること)を行います。
- 病変が気管支の奥の方にあり、内視鏡が届かない場合は、X線透視を用い、到達を目指します。
※造影剤を使用する場合、重篤なアレルギー反応が起こることがあります。アレルギーの経験のある方は必ず申し出てください。
[肺がんの診断に至った時]
- 「病期診断」という、がんの進行度の分類を行います。
- 全身の造影CT・MRIや、エコー検査、PET検査(他院で実施)、呼吸機能検査などを行います。手術が可能か、抗がん剤・分子標的剤や放射線治療が適切か、またはむしろ何も治療しない方がよいのかを判断するためです。
<病期診断>
- 病期とは、がんの進行度を示す言葉です。病期によって、標準治療の選択肢が決まっています。
- 肺がんでは、がんの大きさ、広がり、リンパ節や肺の中の別の場所、脳や肝臓、副腎、骨などへの転移があるかどうかにより病期を分類します。以下のTNM分類というものを用います。
T : がんがどこまで広がっているか
N : リンパ節転移があるか
M : 別の臓器への転移があるか
- 病期は治療前の検査で決まりますが、手術のときに転移などが見つかれば、変更されることもあります。
(肺がん取扱規約/第7版・第8版)
当院の治療
抗がん剤治療・分子標的剤治療、放射線治療が可能です。
抗がん剤治療
- 薬を用いて、がんの進行を遅らせようと試みる治療です。
- 副作用は、特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、骨髄など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、脱毛、口内炎、下痢、吐き気、しびれ・感覚低下や、白血球や血小板の数が少なくなることがあります。他には、心臓への影響として不整脈が、また肝臓や腎臓に障害が出ることもあります。副作用が著しい場合や、治療の無効時には、治療薬の変更、治療の休止、中断を検討、決断します。
分子標的剤治療
- 非小細胞肺がん治療で用います。
- がんの増殖や転移などに関わる、がん細胞の分子を標的とした「分子標的薬」という新しい薬剤を用います。
- すべての肺がんに使える薬ではありません。
- がん細胞やがん組織の遺伝子検査で、対象となる方は限られます。
- 副作用は、皮膚障害や、間質性肺炎などの重篤な副作用が出ることがあります。また、難治性の下痢がみられることがあります。
放射線治療
- 高エネルギーのX線を体の外から照射してがん細胞を傷つけ、がんを治療します。
- 放射線治療の専門医師が行います。
- 抗がん剤治療(化学療法)と同時に行う方法もあります。
- 骨や脳への転移に伴う症状を緩和する目的で行うことがあります。
- また、小細胞肺がんでは脳への転移がしばしばみられることから、予防的全脳照射という、治療によりがんが完全に消失した患者さんに対して、脳への転移を防ぐため行うことがあります。
- 副作用は、主として放射線が照射された部位に起こる特殊な肺炎、食道炎、皮膚炎です。
気管支喘息
根治は出来ませんが、現時点では吸入ステロイドでほとんどの人が安定した生活が送れます。今の治療のベストです。指導・普及に努めます。
呼吸不全
慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の慢性期から急性増悪、急性呼吸促迫症候群(ARDS)に至るまで、NPPVや通常の人工呼吸器の様々なモードを用いて管理します。入院中、他科診療時は支援を行います。
肺炎
非常に多い疾患です。主に他科診療時の支援となります。様々な学会ガイドラインを考慮して行います。外来で治療することもあります。ご老人や脳血管障害の既往等のある方は誤嚥による肺炎も多いです。加齢現象と言えますが、リスクを少しでも軽減するように入院となった際は嚥下機能もチェックする必要があります。
診断は1泊(18時入院、翌朝退院)で終夜ポリソムノグラフィー(PSG)検査です。解析(マニュアル)は外注です。治療は鼻マスクでの陽圧呼吸(CPAP)やNPPVとなります。手術や口腔内装具は扱っておりません。いびきの強い人、昼間も眠たい人はもちろん、さらに高血圧もある方・心不全と言われている方や車を運転する方、危険作業に従事される方等は特に検査をお勧めします。
肺は不思議な臓器です。アナログの世界でもあります。日常でもよくわからない病態は多々あります。治らないものも多いですが一緒に“今”のベストを尽くしたいと思います。
風邪が治らない、咳が長引く等からよく言い表せない病状まで何でも気軽にご相談ください。
スタッフ紹介
非常勤医師 |
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川口 知哉 |
松本 吉矢 |
栩野 吉弘 |
堤 将也 |
施設認定
- 日本呼吸器学会関連施設