こんにちは。府中病院 診療技術部の超音波検査室です。

今回は、痛みの部位や症状によって考えられる疾患を紹介したいと思います。

① 上腹部中央痛(みぞおち)

まずは、上腹部中央痛です。

  • 胸やけ、つかえる感じ →食道炎、食道潰瘍
  • 鈍痛、不快感 →胃炎
  • 食後2~3時間するとチクチク痛む →胃潰瘍
  • 空腹時の痛み、食事をするとおさまる →十二指腸潰瘍
  • 生鮮食品摂取後の腹痛 →アニサキス胃炎
  • 鈍痛、体重減少 →胃がん

② 右上腹部痛

次に、右上腹部痛です。(生化学検査の異常値も参考にご覧ください)

  • 発熱、黄疸 →急性肝炎
  • 疲れやすい、押すと痛む →アルコール性肝炎
  • 疲れやすい →肝硬変、肝臓がん
  • 差し込む痛み、発熱、黄疸 →胆嚢炎、胆管炎、胆石症

③ 右下腹部痛

次に、右下腹部痛です。(炎症反応や腫瘍マーカーの値も参考にご覧ください)

  • 悪心、嘔吐、みぞおちの痛み →虫垂炎
  • 圧痛、発熱 →盲腸、上行結腸憩室炎
  • 粘血便、体重減少、嘔吐 →盲腸がん、上行結腸がん

④ 左上腹部痛

次に、左上腹部痛です。(生化学検査の異常値も参考にご覧ください)

  • 鈍痛、時に右上腹部痛 →急性膵炎
  • 背部痛、体重減少 →膵臓がん
  • 粘血便、体重減少 →下行結腸がん

⑤ 左下腹部痛

次に、左下腹部痛です。

  • 便秘の後の血便、圧痛 →虚血性腸炎
  • 粘血便、体重減少 →下行結腸がん、S状結腸がん
  • 圧痛、発熱 →S状結腸憩室炎

⑥ 背部、腰部痛

次に、背部痛、腰部痛です。(尿管結石の追跡は腹側から膀胱の入り口まで尿管を追跡してください)

  • 激痛、血尿 →尿管結石、腎結石
  • 背部痛 →解離性大動脈瘤

⑦ 下腹部痛(全体)

次に、下腹部痛(全体)です。(尿検査や病理所見を参考にご覧ください)

  • 頻尿、血尿 →膀胱炎、前立腺炎
  • おりものが増える →卵管炎、卵巣炎
  • 鈍痛 →子宮内膜症
  • おなかが張る、微熱 →腹膜炎
  • 下腹部激痛 →卵巣嚢腫捻転

いかがだったでしょうか?

痛みの部位、症状によって考えられる疾患を紹介しました。

急性腹症で超音波検査を施行する場合は、このような疾患を考えながら日々検査を進めています。余談になりますが、私の師匠がエコー刑事(デカ)と言う言葉を使っています。刑事は事件の現場検証や周囲の聞き込みをしながら証拠を集め犯人を逮捕していきます。超音波検査も痛みの周囲を検索して所見(証拠)を集め消去法で現在、痛みの原因になっている疾患(犯人)を指摘(逮捕)していきます。痛みの原因を追及して指摘した時の満足感は格別なものがあります。これからも患者さんに信頼されるように精進していきたいと思います。