心不全は「心臓の病気」と思われがちですが、正しくは「心臓の働きが悪くなり、様々な症状を認める状態」のことをさします。そのため、心臓を痛めてしまう多くの心臓病が原因となります。代表的なものとして、心筋梗塞、心房細動などの不整脈、僧帽弁閉鎖不全症や大動脈弁狭窄症などの弁膜症、心筋症や高血圧があります。特に高血圧は、すぐには症状を認めないため放置されがちですが、治療をしなければ、将来必ず心不全を起こすため、早期から減塩・体重管理・適度な運動を行い、不十分な場合は降圧薬による適切な治療を受けることが重要です。

参考資料：循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 ［※注・別のウインドウが開きます］

心不全は繰り返すことが多いです。その理由は、心不全は心臓病が原因で起こる症状であり、その症状は2つの要素、①あなたの心臓が全身に向けて送り出すことができる血液量（酸素の量）と、②日々の生活であなたの体が必要とする血液量（酸素の量）のバランスで決まるからです。2つのバランスがとれている時は、症状がないので心不全ではありませんが、②が①を上回りバランスが崩れると症状がでてしまい、その時点で心不全を起こしたことになります。心不全で入院された患者さんは、治療により症状が良くなるので、「心不全が治った」と思われますが、正しくは、「崩れたバランスを元通りに戻した」だけなので、油断をすると、簡単にバランスを崩してしまい、再び心不全になってしまいます。そのため、心不全は繰り返し安いと言われています。体の中で特に血液（酸素）を必要とするのは、栄養をとるための胃腸や尿とともに老廃物を出す腎臓、そして体を動かす全身の筋肉ですので、暴飲・暴食や働き過ぎ・動きすぎは、バランスを崩す原因となり、容易に心不全を起こします。

心不全の症状が悪化して入院での治療が必要になった方も、多くの方は治療により症状は良くなり退院されます。しかし、問題が1つあります。それは、入院したことで身体機能、簡単に言えば、“体力”が低下することです。初めて心不全で入院された患者さんは、退院時の体力低下はわずかですので、退院後も、仕事に戻る、家事が出来る、自由に外出できるなどほぼ以前と同じ生活をおくることができます。しかし、心不全による入院を2回、3回と繰り返すと、その都度体力はどんどん低下し、気づいた時には、退院しても家から一人で出れない、日中ほとんどテレビを見たり、ベットに横になって過ごしているなどの生活になってしまいます。つまり、心不全の再発は、生活の質（QOL）を非常に低下させ、ひいてはあなたの寿命を縮めてしまいます。

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心不全の治療目標は、様々な症状を軽減し、生活の質を維持しながら長生きすることです。そのために最も重要なことは、心不全を悪化させ入院しないこと、つまり、これまで述べてきた“バランス”をしっかり保つことです。これができれば、心不全にはならない、つまり治療ができたことになります。しかし、それを実行できるのは、あなた自身です。適切な食事量や飲水量を保ち、減塩や運動習慣に注意しながら“バランス”を維持した生活をおくりましょう。その効果を判定する最もよい目安は体重です。体重が維持出来ていれば、バランスはくずれませんので、心不全にはなりません。また、すでに薬での治療を受けている方は、薬を飲んでいることでバランスを維持しているので、決して自己判断で中止・減量してはいけません。