血液のがんとは

血液細胞が腫瘍化し増殖する疾患(造血器腫瘍)です。放射線、細菌(ヘリコバクタピロリなど)、薬剤(抗がん剤)、ウイルスなどが原因となって血液細胞の遺伝子異常が起こり、腫瘍性に増殖します。

急性白血病について

白血病は造血幹細胞(骨髄中の未熟な細胞)に遺伝子異常が生じて、分化能を失った異常な細胞(白血病細胞)が増殖する疾患です。骨髄系の細胞が増殖すれば急性骨髄性白血病、リンパ系の細胞が増殖すれば急性リンパ性白血病と言います。

急性白血病の症状

易感染性による症状 : 発熱、全身倦怠感

貧血による症状 : 全身倦怠感、顔面蒼白、息切れ

出血傾向による症状 : 鼻出血、歯肉出血、皮下出血など

臓器浸潤による症状 : リンパ節腫脹、肝脾腫、歯肉腫脹、骨痛など

急性白血病の原因

染色体や遺伝子の異常が原因の場合は、抗がん剤治療や放射線治療を受けた後に起こる二次性白血病以外は、明らかな原因は不明です。どの年齢層でも発症しますが、急性骨髄性白血病は50歳以上に多く、急性リンパ性白血病は10歳未満に多いです。急性骨髄性白血病を発症する方は人口10万人あたり約2~3人程度です。

急性白血病の検査

診断のために血液検査、骨髄検査などを行います。血液中の異常な細胞を顕微鏡で詳しく調べてどのタイプの白血病か診断します。骨髄検査は診断と白血病の対応の分類に必要な重要な検査です。細胞表面マーカー(白血病の表面にある細胞を特徴づける分子(抗原))、染色体遺伝子検査などを行います。

(骨髄検査の方法)

うつ伏せの状態で皮膚を消毒し、局所麻酔の後、腰の骨から注射器で骨髄液を吸引して採取します。

急性白血病の治療

血液検査と骨髄検査などにより急性白血病の分類をし、それぞれにあった化学療法(抗がん剤治療)を行います。いくつかの抗がん剤を組み合わせて寛解導入療法を行い、白血病細胞をゼロに近づけたら寛解を維持するための寛解後療法(地固め療法、維持療法)を引き続いて行います。主な抗がん剤はイダルビシン、シタラビン、ダウノルビシン、ビンクリスチンなどです。病型や病態によっては脳や脊髄に白血病細胞が浸潤することがあり、点滴では抗がん剤が届きにくいので直接脊髄腔に抗がん剤を投与することもあります。病型によっては分化誘導療法(白血病細胞を分化成熟させる)、分子標的治療(表面マーカーに対する抗体に抗がん剤を結合させ、抗がん剤が選択的に白血病細胞に取り込まれる)などを行う場合もあります。

支持療法

抗がん剤治療により白血球減少が起こると感染症を起こしやすくなりますので、当院では白血球減少期にはクリーンルームに入室してもらい感染予防に努めます。現在、クリーンルームは院内に13室あります。また、抗がん剤治療による血球減少に対して赤血球輸血や血小板輸血を行います。抗がん剤による吐き気に対しては吐き気止めを使用します。

長期間の入院になることも多く精神的なサポートを看護師、医師のみならず臨床スピリチュアルケアカウンセラーも介入します。

白血病の治療中に筋力や体力が低下しますが、患者さんの回復力を高め、残っている能力を維持、向上させるためにリハビリテーションを行います。クリーンルームの中でも「自転車こぎ」などを行います。

造血幹細胞移植

病型、年齢などにより同種骨髄移植や末梢血幹細胞移植、臍帯血移植などを行います。

悪性リンパ腫について

病型、年齢などにより同種骨髄移植や末梢血幹細胞移植、臍帯血移植などを行います。

悪性リンパ腫の症状

首やわきの下、足の付け根などのリンパ節の腫れ(多くの場合痛みはありません)、発熱、体重減少(半年で10%以上の低下)、寝汗などがあります。

悪性リンパ腫の原因

特殊な場合を除いて、原因不明です。特殊な場合とは、成人T細胞性白血病リンパ腫のウイルス感染、胃MALTリンパ腫のヘリコバクタピロリ菌感染などです。

悪性リンパ腫の検査

診察によりリンパ節の腫れや症状を確認します。血液検査で血液細胞や臓器に異常がないか確認します。診断のためにリンパ節生検をして、腫れているリンパ節の組織を手術で採取し顕微鏡で確認します。リンパ節の細胞の細胞表面マーカーや染色体、遺伝子検査などを行います。病期の広がり具合を調べるためにCT、MRI、PET、超音波検査などの画像検査を行います。骨髄にリンパ腫細胞が広がっていないか骨髄検査を行って調べます。

悪性リンパ腫の治療

悪性リンパ腫のタイプ、病期(広がり具合)、患者さんの状態などにより治療方法が決定されます。ゆっくり進むタイプ、急速に進むタイプ、その中間的なタイプなど病勢に応じて治療方法が決まります。(以下詳細)

薬物療法-化学療法(抗がん剤)

リツキシマブが使用されます。当院では初回治療は入院で行い、外来化学療法が可能な場合は以後外来で化学療法を行います。

放射線治療

限局した病変に対して行われます。リンパ腫病変に放射線を照射します。週に5回、照射を繰り返します。リニアック 可能な場合は外来通院で行います。

※上記治療で効果が期待できない場合などに造血幹細胞移植を行います

多発性骨髄腫について

骨髄において形質細胞が単クローン性に増殖するリンパ系腫瘍です。腎機能が悪くなったり、骨折しやすくなったりする特徴があります。若い人には少なく高齢者に多い疾患です。

多発性骨髄腫の症状
  • 骨 病 変 : 骨がもろくなり(骨粗鬆症)、骨折しやすくなります。背骨の圧迫骨折などで病気がみつかることがあります。
  • 血球減少 : 赤血球減少により貧血症状がでます。白血球減少により感染症をおこしやすくなります。血小板減少により出血しやすくなります。
  • 腎機能障害 : 免疫グロブリンが原因の尿細管閉塞による骨髄腫腎という病態やアミロイド腎、骨髄腫細胞の腎臓への浸潤が原因になることもあります。

※原因不明な腎不全の精査中に多発性骨髄腫が原因であることが判明することもあります。

多発性骨髄腫の治療

病状、年齢などにより治療開始時期や治療法は変わってきます。主に化学療法、放射線治療、自家末梢血幹細胞移植などを行います。

化学療法、自家末梢血幹細胞移植

初回治療は新規薬剤といわれるボルテゾミブ、レナリドミドなどが使用されます。移植適応例では初回治療に続いて末梢血幹細胞採取が行われ、そのあと高用量のメルファランを使用して末梢血幹細胞移植が行われます。

疼痛コントロール

骨病変部位の痛みをとる目的などで局所に放射線治療を行うことがあります。また医療用麻薬を使用して痛みの緩和を行います。

※再発、難治例などではカルフィルゾミブ、エロツズマブ、パノビスタットなど新しい薬剤を使用することがあります。また年齢など適応があれば同種造血幹細胞移植を行うこともあります。

外来案内・診療科紹介はこちら