大腸がんについて
大腸は、1.5~2mの長さの腸管で回腸(小腸)に連続して盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸、肛門管へと続いています。大腸がんはその大腸の粘膜から発生する悪性腫瘍です。大腸がんの発症初期は自覚症状が少ないことから早期発見のためには定期的な健診が必要です。大腸がん検診では便潜血検査を行いますが、精密検査では注腸X線検査、大腸内視鏡検査を行います。
大腸がん(結腸がん・直腸がん)の手術療法
治療の原則はがんを残すことなく、きれいに取り除くことです。がんを根絶する手術を根治手術と呼びます。がんが筋層からさらに深く入り込んでいるとあらかじめ診断されると、手術治療が行われます。
- がんをもった腸の切除だけでなく、リンパ節郭清も行います。
- 手術前にリンパ節に転移があるか無いかを調べる検査の精度が十分でないため、がんの深さを指標としています。
- 切り取ったリンパ節にがんの転移が証明されると、再発予防のため化学療法が奨められます。
- 広い範囲のリンパ節を切り取ったために手術後に障害が生じることはほとんどありません。
- 腸管を切除した後、残った腸管をつなぎます(吻合)。
- 直腸がんが肛門近くにあり、吻合ができない場合、人工肛門になることがあります。
大腸がんの手術実績推移
手術治療の合併症
以上のように、合併症が起こった場合の適切な対処だけでなく、起こる可能性が高い場合の手術の必要性、術式、危険性の程度、他の治療の選択肢と予想される治療経過や治療の限界などをご理解いただいた上で手術をうけてください。
切除不能・再発大腸がんの治療
化学療法
がんに作用する薬を抗がん剤といい、がん細胞を死滅させたり、がんが大きくなるのを抑える作用をもっています。大腸がんの治療には、抗がん剤を注射する方法や内服する方法があります。
大腸がん化学療法導入数
切除不能転移・再発大腸がんに対する化学療法
当院の大腸がん化学療法レジメン 2017年1月現在
化学療法の継続
すべての化学療法を使用することでステージⅣでも生存期間が3年前後まで伸びるようになっています。
術後補助化学療法
- 手術にてがんをすべて切除しても、約17%は再発します。
- 再発を抑える目的で補助化学療法が行われます。
- ステージIIIの大腸がんまたはステージIIの大腸がんで再発の可能性が高いがんに行います。
- 5-FU とロイコボリンを 6 カ月間注射する方法が一般的です。
- 内服薬である UFT +ユーゼル錠もしくはゼローダ錠の予防効果が注射療法と同等であることが米国で示されています。
- 最近は持続静脈投与による 5-FU+ロイコボリン+オキサリプラチン(mFOLFOX-6)や注射と内服薬の併用 カペシタビン+オキサリプラチン(XELOX)も再発予防効果が良い報告があります。
- TS-1(ティーエスワン)の内服もUFT+ユーゼル錠と同等である結果が報告されました。
府中病院外科では
- ステージⅡ 低リスク:UFT(ユーエフティー)もしくは治療なし
- ステージⅡ 高リスク:UFT+ユーゼル療法、カペシタビン療法(ゼローダ)
- ステージⅢ:XELOX療法、mFOLFOX-6療法、UFT+ユーゼル療法、カペシタビン療法(ゼローダ)
原則6カ月施行しています。
直腸がん術前放射線化学療法
進行直腸がんに対して積極的に術前放射線化学療法を行っています。
他に、再発した大腸がんによる症状を和らげるために緩和的放射線療法を行うこともあります。がんによる症状を和らげる目的で行います。骨盤内病巣、骨転移、脳転移、リンパ節転移などに照射します。痛み、出血、神経症状などでは約 80%で症状が改善します。
下部消化管グループでは「大腸がん」を中心に、さまざまな腸疾患の治療にあたっています。
当院では初発大腸がんの約85%に腹腔鏡下手術を施行し、進行・再発大腸がんに対しては、手術療法・化学療法・放射線療法を組み合わせて治癒を目指す治療を行っています。大腸がんの化学療法は複雑になってきていますが、ガイドラインに沿って個々の患者さんに適した化学療法を外来で安全に行っています。
「直腸がん」に対する術前放射線化学療法や術前化学療法を行うことでステージを下げ、局所再発率を低下させ可能な限り「肛門温存手術」を施行しています。
その他、肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛・直腸脱など)に対しても手術療法を行っています。