胃がんについて
胃がんは全体の割合としては減少傾向にありますが、罹患率では男性1位、女性3位と依然日本人には多いがんの一つです。ひと昔前は、手術以外に治療法がない状況でしたが、近年、内視鏡治療、腹腔鏡手術、開腹手術、抗がん剤治療、分子標的治療と治療の幅が広がってきています。2000年以降は、日本胃癌学会から胃がん治療ガイドラインが出版されており、当科でも治療指針に沿って日常診療を行っております。そして、2009年4月より「大阪府がん診療拠点病院」に指定され、ますます胃がん症例が増加しています。
治療方法
当院の胃がんStage別5年生存率
食道がんについて
我が国で1年間に食道がんに罹患する人はおよそ毎年10,000人ほどで、胃がんの約8分の1程度の発生頻度であります。年齢別にみると40代後半以降に急激に増加しそのほとんどが男性です。食道がんは消化器外科領域の中でも最も治療困難な予後不良のがんの一つであり、他のがんと比較しても悪性度が高く転移も早い段階で生じ、また手術難易度も高く治療を行うにあたり侵襲も非常に大きくなります。
食道がんの治療には、内視鏡治療・手術・抗がん剤治療・放射線治療がありますが、症例によっては集学的治療が必要となるため、当科でも消化器内科・放射線科とも密に連携を行いチーム医療を実践しております。
当科では常に最新の治療を提供し、食道がん手術におきましても定型化を行い、安全で根治性を損なわず患者さんへの負担を最小限にするような最善の治療を目指し日々精進しております。
診断
食道がんの確定診断やがんの拡がり具合を調べるためには様々な検査を行う必要があります。以下のような検査で判断します。
-
食道造影検査(レントゲン検査) バリウムを飲んでレントゲンで撮影する検査で、食道がんの存在する位置や狭窄の程度などを判断します。 -
内視鏡検査 内視鏡検査では、がんの一部を小さくつまみとって、顕微鏡でがん細胞の有無をチェックし、がん細胞を顕微鏡で確認できれば初めて食道がんと確定診断されます。 -
CT検査(頸部~腹部) 身体の内部を輪切りにしたように見ることができるX線検査です。がんと食道周囲の臓器との関係やリンパ節転移、または肺、肝臓などの遠隔転移を調べます。 -
超音波検査 超音波検査は腹部や首(頸部)について行います。腹部では肝臓への転移や腹部リンパ節転移の有無などを検索し、頸部では頸部リンパ節転移を検索します。 -
PET検査(当院では施行できないため他院へご紹介いたします) がんは正常細胞よりも活発に増殖するため、そのエネルギーとしてブドウ糖を多く取り込みます。PET検査では放射性ブドウ糖を注射し、その取り込みの分布を撮影することでがんを検出します。全身の小さな転移を見つけるのに必要です。 -
気管支鏡検査(通常は行いません) 食道の前にある気管にがんが及んでいるかどうかを調べます。
食道がんの発生と進行
食道がんは胸部中部食道に最も高頻度に認められます。がんは食道粘膜から発生し、深達度は粘膜下層、筋層へと順に進行します。食道周囲には気管、肺、大動脈、心臓などの重要臓器が近接しているので、食道壁外にまで腫瘍が進行するとこれらの臓器に浸潤し、状態によっては切除不能となります。粘膜と粘膜下層に留まるがんは表在がん(粘膜までに留まるものは早期がん)、筋層以深のものはすべて進行がんと呼びます。従って進行がんであっても、転移の状態にも影響しますが、早期がんに近いものから末期がんに至るまで様々な進行度の症例があります。
危険因子
我が国で90%以上と頻度の高い扁平上皮がんでは飲酒および喫煙が危険因子として重要であり、その両者を併用することで危険性が増加することが知られています。また食生活においては栄養状態の低下や果物や野菜を摂取しないことによるビタミンの欠乏も危険因子とされ、緑黄色野菜や果物は予防因子とされています。腺がんは我が国では発生頻度は数%でありますが、欧米では約半数以上を占めます。胃食道逆流症(GERD) による下部食道の持続的な炎症に起因するバレット上皮がその発生母地として知られており、胃食道逆流症(GERD)の存在やその発生要因の高いBMI、喫煙などが発生に関与しているという報告があります。
進行度(ステージ)
食道がんの治療方針の決定や、治療によりどの程度治癒する可能性があるかを推定する場合、食道がんの進行の程度をあらわす進行度分類を使用します。我が国では日本食道疾患研究会の「食道がん取扱い規約」に基づいて進行度分類を行います。各検査で得られた結果や手術時の所見、摘出標本の病理検査結果により、深達度・リンパ節転移・他臓器への転移の程度を判断し病期の決定を行います。
「日本食道学会/編 臨床・病理食道癌取扱い規約第10 版」より引用
治療
食道がん治療は内視鏡治療・手術・放射線治療・抗がん剤治療に大別されますが、それぞれの治療には長所と短所があり、初回治療としていずれの治療を選択するかは進行度と全身状態で決定します。症例によっては集学的治療が必要となるため、これらの治療を組み合わせて行う場合もあります。患者さんには十分に病状を説明し納得をいただいた上で、それぞれに一番適した治療法を受けていただきます。
食道がんの進行度診断を壁深達度・リンパ節転移・遠隔転移に基づいて正確に行い、当科では進行度別にガイドラインに沿った適切な標準的治療を行っています。
当科での治療方針
術前・術後管理
[術前]
食道がん術後は特に呼吸器合併症が問題となりますので、外来初診時より禁煙指導をさせていただき、同時に呼吸器リハビリを行い喀痰排出訓練を行っていただきます。
[術後]
呼吸器リハビリに加え嚥下リハビリが必要となります。 合併症がなければ、術後1週間程度で飲水、食事が開始となり、早ければ3週間前後で退院可能な状態となります。
手術実績
食道・胃・十二指腸にかけて、悪性腫瘍を中心に診療にあたっています。
近年、治療は手術だけでなく、抗がん剤治療、分子標的薬など多岐にわたります。また、食道がんに対しては、当院でも施行可能な放射線治療が重要な位置を占めます。患者さんには、それぞれの進行度にあったベストの治療を最新の知識と経験をふまえて施行しています。
さらに、鏡視下(胸腔鏡・腹腔鏡)手術に力を入れており、体にやさしい最新の技術を患者さんに提供しています。