コラム
統計
◎ 乳がんの危険因子
【乳がんと初潮年齢】
初潮年齢が13歳以下の女性と比較して、14~15歳で初潮があった女性は数%、16歳以上で初潮があった女性は30%ほど乳がんにかかりにくいという統計データがあります。
【乳がんと初産年齢】
初産年齢が24歳以下の女性と比較して、初産が25~29歳の女性は約1.3倍、30~34歳の女性は約1.7倍、35歳以上の女性では約2.2倍、そして出産暦のない女性は約1.5倍、乳がんになりやすいという統計データがあります。
【 乳がんと出産数】
出産数が1度の女性と比較して、2度の出産を経験された女性は約5%、3度以上の出産を経験された女性は約30%ほど乳がんにかかりにくいという統計データがあります。
【乳がんと閉経年齢】
閉経年齢が49歳以下の女性と比較して、50歳以上で閉経を迎えた女性は約2%乳がんになりやすいという統計データがあります。
左記のように乳がんの危険因子である出産や月経にかかわっているのが女性ホルモンのエストロゲンです。 エストロゲンは乳腺組織を刺激し、細胞の増殖を促します。細胞の増殖は遺伝子が傷つく原因となり、そして遺伝子が変異することでがん発症へと関係します。
現代の日本女性は、食生活の欧米化によって発育も体格もよくなりました。そのため初経が昔より早く、逆に閉経は遅くなっています。また、初産年齢の高齢化が進み、若年期に出産を経験しない女性が多くなってきています。子供を産まない、出産回数の少ないという女性も増加しています。これらがエストロゲンの作用期間を長くして乳がん発生のリスクを高めていると考えられています。
エストロゲンの主な産生源は卵巣(閉経前)および脂肪組織(閉経後)になります。
閉経後は卵巣に代わって、主に脂肪組織における男性ホルモンがエストロゲンに変換されます。そのため閉経後は肥満であることが乳がん発生のリスクを高めることになります。
また肥満である女性は、食生活が脂っこいものが好きである場合が多く、食生活が欧米女性に近いということも乳がん発生のリスクを高めているといえるでしょう。
アルコールについては一日に1杯程度の飲酒については乳がん発症との因果関係はないと考えられていますが、それ以上を常飲すると、飲む量が増えれば増えるほどリスクは高まると考えられています。
◎ BRCA(遺伝)
乳がんを引き起こす要因として遺伝も関連があります。遺伝子の変異が明らかで子供に受け継がれるものを「遺伝性乳がん」と呼びます。
現在、BRCA1、BRCA2という乳がんの増殖を抑える役割をしている遺伝子の両方、あるいはいずれかに異常を持っている人は乳がんにかかりやすいことがわかっています。ただ、実際に遺伝が関与しているのは乳がん患者のうち5%程度と考えられていますからそれほど多くはありません。一般に、三親等以内の家族・親戚に乳がんの人が複数いる場合を「家族性乳がん」と呼びますが、家族は食生活などが似ていることが影響することもありますので、必ずしも遺伝したとはいえません。
正常解剖
女性の乳房には母乳を作る乳腺があります。乳腺は乳汁を作る乳腺房を含む小葉と、乳汁が通る乳管からなります。
乳がんのほとんど(約90%)は乳管の上皮組織から発生する乳管がんです。残りの約5%が乳腺房組織から発生する小葉がんで、他に粘液がんや髄様がんなどに分類されます。
乳がん発生と進展・転移
乳がんが乳管や小葉の中にとどまっている間は、転移がありませんので予後は良好です。乳がんが進行すると、多くは周りの基底膜を破って周囲のリンパ管や血管に入りこみます。
治療せずに放置すると、リンパ管や血管を通って周囲のリンパ節や骨、肺、肝臓などの臓器に転移し、生命を脅かすことになります。
乳がんの病期(ステージ)分類(TNM分類)
乳がんの進行度は、がんがどのくらいの大きさになっているか(T0-T4)、 周辺のリンパ節にどれほど転移しているか(N0-N3)、 遠隔臓器への転移はあるか(M0-M1)、の3つの要素で決められています。 これは、TNM分類といって、国際的な規約として使われています。TNM分類をもとに、がんの進行度と広がりの程度を、 一度に表わすことが出来るように作られたのが、ステージ分類です。乳がんは進行度によって治療法は異なります。乳がんの治療はがんの進行度によって異なってきます。そのため担当医師から進行度について正しい説明を受けることが大切です。