乳がん検診・自己検診と乳がんの検査

乳がんの大きさが1cm位の大きさになると触った際に「しこり」として触れるようになってくるため、乳がんは自覚症状で気が付くことが多いがんです。乳がん発見には普段からの心掛けが重要です。日ごろから注意をしておくことで、乳がんが進行がんになる前に発見ができる可能性が高まります。定期的に自分の乳房を触って自分自身の正常な乳房を把握しておくことと、異常に気づいたら、自分で判断するのではなく、必ず検査を受けに行くようにしてください。

乳がんは「乳房のしこり」が認められたことで患者さんが受診して発見されるケースがほとんどですが、他にも下記のような自覚症状があります。

  • 乳房が異常に腫れてきた
  • 皮膚にくぼみや引きつれが見られる
  • 乳頭がくぼんでいる
  • 乳頭から血液の混じった分泌物がでてきた
  • わきの下に腫れを感じる
  • 首やわきの下にグリグリとしたシコリがある
  • 乳房が痛みや熱を伴い赤くなってきた

乳がん早期発見の為に-乳房自己検診のススメ

閉経前の女性は月経がきて7日目に乳がんの検査をします。閉経後の女性は毎月決まった日に自己検診を行います。

  1. 入浴前に鏡に向かい右手を上げ後頭部におきます。右乳房の色、形及び乳頭から分泌物がないか、変わったところはないかを観察します。
  2. 続いて左手に変え左乳房を同様に観察します。その後、両手を下ろし両乳房の相違を観察します。
  3. 入浴時に身体を濡らし乳房を暖めます。そして左手を後頭部に置き右手の真ん中3本の指を合わせて乳頭を中心にゆっくりと内側から外側へ時計回りの方向へ動かし触ってみて固まりや小さなしこりがないかを確認します。
  4. その後、反対の手に変え、もう一度同じように確かめる。最後に乳頭をつまみ分泌物があるかを確認します。
  5. 入浴後、枕を背中に敷きまっすぐ横になった後左手を後頭部に置き、右手で左の乳房を触り輪を描きながら順を追って進めていきます。この時、わきの下と乳房の上も行います。終わったら反対側も同様に行います。
チェック1

鏡の前で観察

チェック2

乳頭乳輪部の観察

チェック3

座位での確認

チェック4

臥位の確認

定期的に自分の乳房を触って自分自身の正常な乳房を把握しておくことと、異常に気づいたら、自分でがんか否かを判断するのではなく、必ず検査を受けに行くことが大切です。

  • 乳がんは進行すると骨転移や肺転移、肝臓転移、そして脳転移などの遠隔転移を起こします。
  • 乳がんが骨に転移した場合には肩や背中、腰の骨などに痛みを感じるようになってきます。
  • 乳がんが肺に転移した場合には息が苦しくなったり、咳き込んだりすることがあります。
  • 乳がんが肝臓に転移した場合には背中や腰、お腹が張って痛みを感じたり、食欲が落ちてきたり時には黄疸がでることもあります。腹水がたまり妊婦さんのようになることもあります。
  • 乳がんが脳に転移した場合には、目がかすんだり、ふらふらしたり、味覚が変わったり、ロレツが回らなくなってきたり、と様々な症状が出ることがあります。

乳がんの検査

問診表には月経の状況や出産、家族暦などの質問があると思います。これらは乳がんになりやすい方なのかを判断する材料になります。しこりにいつ気がついたか、しこりに気づいてからの大きさの変化があるか・無いか、そして月経周期によりしこりの大きさが変わるか、痛みがあるかなども聞かれると思います。

あらかじめ上記の質問に答えられるようにしておくと良いでしょう。

医師が乳房を観察し、手で乳房やリンパ節の状態を検査することを視触診といいます。

乳房の変形の有無や乳頭から分泌物が出ていないか、首やわきの下のリンパ節が腫れていないか、しこりの大きさや硬さ、境目がはっきりしているかなどを調べます。

マンモグラフィーとは乳腺のX線撮影のことです。より診断しやすい写真を撮るため乳房を圧迫して薄く平らにしながら撮影します。

マンモグラフィーでは腫瘤(しゅりゅう)や石灰化などが確認できます。腫瘤は何らかの細胞が増えている場合に見られます。腫瘤の境目がはっきりしていない場合には乳がんが疑われます。石灰化は乳房の一部に何らかの原因でカルシウムが沈着したものです。小さな石灰化がたくさん集まっている場合には乳がんが疑われます。

マンモグラフィでは、ごく小さな乳腺組織の変化やシコリを作る前の段階の石灰化でみつかる非浸潤がんの乳がんを見つけることができるなど、乳がんの早期発見に大いに役立ちます。

「マンモグラフィ検査」特設ページ

  • 小さな器具を直接胸やお腹、背中に当て、そこから出る超音波によって臓器の状態を調べます。主に乳房内再発、所属リンパ節、肝転移などの診断に使われます。
  • 副作用がほとんどなく手軽に行えます。

穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん:FNA)はしこり(腫瘤)の確定診断を行うための検査で、細い注射針を皮膚の上から刺して、病巣部の細胞を吸引し、細胞が悪性か良性かを顕微鏡で調べる方法です。直接細胞を採取する検査の中ではもっとも患者さんの負担が少なく、簡単な方法です。十分な細胞を取ることが出来ればかなりの確度で診断がつきますが、十分に細胞を採取できなかった場合は診断が困難になるため、正しく判定できる割合は80%から90%程度になります。

針生検法(CNB)は細胞診よりもやや太めの針を刺し組織の一部を取り出して顕微鏡で調べる検査方法で、通常はマンモグラフィーや超音波検査と組み合わせて採取部分を確認しながら検査が行われます。

針生検法による組織診は正しく判定できる割合(正診率)が高く、侵襲が少なく、簡便であるため多くの施設で行われています。細胞診と異なりがんによって変化した組織の構造や周囲の細胞との関係を観察することで、より正確で精密な判断が可能となります。また、乳がんの場合さらに詳しい性質を調べるための免疫組織染色という検査を行うことができます。ただし採取する組織が小さいことなどにより正診率は100%とはなりません。

外科生検では手術で乳房を切開してしこりの一部を摘出し顕微鏡で組織を観察して、最終的な診断をします。正診率はほぼ100%となります。  乳がんと診断された場合、胸部X線検査や胸部・腹部のCT検査、骨シンチグラフィー、血液検査などを必要に応じて行い、リンパ節、骨、肺、肝臓などへの転移の有無を確認します。

  • X線をあてて、身体のあらゆる部位の輪切りの画像を撮影します。
  • 緊急性に優れ、全身どこでも検査できます。
  • 強力な磁場を使っていろいろな角度から身体の断面を撮影します。
  • 脳や脊髄、骨に囲まれた臓器でも鮮明に写すことができます。
  • 全身の骨の状態を調べるための検査です。骨に結合する放射性物質を少量注射し、特殊なカメラで撮影します。骨転移のスクリーニングとして利用されています。
  • 画像診断のなかでは最も簡便な検査法です。治療効果の判定にも用いられます。

放射線物質を結合させたブドウ糖を少量注射し、特殊なカメラで撮影します。

  • がん細胞がブドウ糖を多く消費する性質を利用してがんを見つけ出す検査です。
  • 1回でほぼ全身を調べることができ、良性、悪性の鑑別も容易に行うことができます。脳や心臓など正常でも多くのブドウ糖を消費する臓器では、がんを判別できません。

腫瘍マーカーは正常な細胞からも多少はつくられますが、がん細胞から特に多くつくりだされるたんぱく質や酵素で、がんの有無や種類、進行状態を示す指標となります。腫瘍マーカーの検査は、一般に血液を採取するだけで容易に検査できるため広く普及しています。

乳がんでは腫瘍マーカーの数値を調べることで手術後の取り残しがないか、抗がん剤や放射線治療の効果があったか、再発の兆候がないかなどをおおよその目安として判断することができます。

腫瘍マーカーの検査は簡便な方法ですが、いくつかの不確実な面もあります。

  • 腫瘍マーカーは偽陽性を示すことがある
  • ある程度がんが進行しなければ陽性(高い値)を示さないことがある
  • 進行がんでも陽性にならないことがある
  • 複数の臓器でつくられるためがんがある臓器を特定できない

そのため、腫瘍マーカーが高い値を示した場合でも、がんの疑いがあるに過ぎず確定検査には画像検査などを平行して行う必要があります。腫瘍マーカーが高値というだけではがんの確定診断はできません。

乳がんの腫瘍マーカーとしては、CA15-3、CEA、BCA225、NCC-ST-439などが臨床の現場で用いられています。これら腫瘍マーカーは早期乳がんの診断には陽性率が低く、がん発見のための検査としてはあまり有用ではありませんが、化学療法(抗がん剤)などの治療効果の判定には有用なことが多くなります。

※各マーカーの基準値は使用するキットの違いで基準値が異なります

CA15-3

【基準値:27(U/ml)以下】

CA15-3は乳がんに最も特異性のある腫瘍マーカーの一つであり、偽陽性率は低い傾向にあります。早期の乳がんでは陽性率はあまり高くありませんが、がんの進行とともに陽性率は高くなるため治療効果をみるには有用です。

CEA

【基準値:2.5(ng/ml)以下-RIA法/5.0(ng/ml)以下-EIA法】

CEAはもっとも一般的な腫瘍マーカーで、乳がん以外にも大腸がんや胃がんなど消化器のがんや肺がんなどで数値の上昇がみられます。そのため、CEAの値が高値を示しただけではがんの特定が難しいといえます。乳がんの陽性率は約50%です。

BCA225

【基準値:160(U/ml)以下】

BCA225は乳がん特異性の高い腫瘍マーカーで、乳がん術後のモニタリングや再発乳がんに対する治療効果判定に有用です。再発乳がんにおける感度はCA15-3と同等以上とされています。

乳がんが転移再発した場合

乳がんは進行すると周囲のリンパ節に転移し、さらに血流にのって肺や肝臓、骨、脳などに転移します。乳がんは初回治療後に再発することがあります。また、乳がんの診断を受けた時点ですでに肺転移や肝臓転移、骨転移、脳転移など遠隔転移してしまっていることもあります。再発する場所が手術で切除した側の胸壁や皮膚、乳房近くのリンパ節などの場合を局所再発、肺や肝臓、骨や脳など乳房から離れた臓器に転移した場合を遠隔転移といいます。

乳房温存術後に乳房内に局所再発した場合には、最初の治療の後に残ったがん細胞が増殖したものと考えられるため、再度その部分を切除することがあります。また、胸壁やリンパ節に再発した場合も手術を行うことがあります。手術をした後も、既に全身にがん細胞が拡がっている可能性を考え、一部を除いて抗がん剤や放射線治療を追加します。

乳房から離れた肺や肝臓、骨や脳にがんが転移するのは、血液やリンパ液の流れにがん細胞が乗ってそれらの臓器に運ばれ、増殖したものになります。遠隔転移巣を切除しても、すぐに別の部位でがんが増殖してしまうため手術を受けるメリットが少ないためごく一部を除いて局所療法である手術は適応となりません。

骨転移によって骨折が起こった場合や脳に一カ所だけしこりができた場合には手術を行うことがあります。また、乳がんの転移であるのか識別が困難な場合に手術をすることがあります。ただし、血液検査や画像検査を行うことで多くの場合、乳がんの転移かどうかある程度判断がつきますので、必ずしも手術をするわけではありません。

肺転移(転移性肺腫瘍)や肝転移(転移性肝腫瘍)、骨転移(転移性骨腫瘍)、脳転移(転移性脳腫瘍)など遠隔転移を有するケースでは主に化学療法(抗がん剤)やホルモン療法など全身治療が中心となります。他に症状緩和を目的として放射線治療が行われることもあります。遠隔転移した場合でも、最初にできた乳がんと同じ性質を持っているため、乳がん治療に使用する抗がん剤などを用いて治療を行うことになります。

以下に、転移再発乳がんに適応を持つ抗がん剤を挙げます。

  • イリノテカン(カンプト、トポテシン):手術不能または再発乳がんの適応を持つ抗がん剤です。
  • ゼローダ(カペシタビン):手術不能または再発乳がんの適応を持つ抗がん剤です。
  • ハラヴェン(エリブリンメシル酸塩 ):他剤が無効だった手術不能又は再発乳がんに使います。
  • タイケルブ(ラパチニブ):ハーセプチンと同じくHER2が過剰に発現している乳がんに使用します。手術不能又は再発乳がんに適応を持つ分子標的薬です。

化学療法(抗がん剤)の副作用

「乳がん治療における化学療法(抗がん剤)の効果判定」「化学療法(抗がん剤治療)を続けるか止めるか」

抗がん剤の治療を行う際の目的は「がんの縮小、そして延命」、「がんの進行を止める」「がんによる痛みの軽減などQOLを改善する」などになります。治療効果が十分で、副作用が軽微であれば治療を続けるメリットは大きいと思います。抗がん剤治療を行う際には治療効果が得られているのか定期的に確認しながら治療を行って行きます。また、抗がん剤治療は体への負担が大きいため以下のPS(全身状態)を参考に治療を行う条件を満たしていることが望ましいとされています。

以下に一般状態判定基準、効果判定基準を示しますので参考にしてください。

一般状態判定基準

    0 無症状で日常生活に支障のないもの
    1 症状はあるが、日常生活に支障のないもの
    2 就床を必要とするが、日中50%以上の日常生活が可能と考えられるもの
    3 日常生活は可能であるが、日中50%以上就床を必要とするもの
    4 1日中ほとんど離床不能なもの

※PS0~3が化学療法治療対象となるが、PS3薬剤感受性の良い腫瘍やPS2に近い3の症例の方が安全である。

治療の効果判定

  • CR (著効) 腫瘍が全て消失した状態が4週間以上継続している。完全寛解ともいう。
  • PR (有効) 腫瘍が50%以上(半分以上)縮小している状態が4週間以上継続している。
  • NR (不変) 効果がPRには満たない、あるいは、増悪が以下のPDに当てはまらない。すなわち、腫瘍の縮小が半分にまで至らないか、25%以内の増大におさまっている。
  • PD (進行) 腫瘍の25%以上の明らかな増大。あるいは他の病変の出現・増大

※一部の腫瘍が縮小した場合でも、他の部分が新たに出現あるいは増大した場合には進行と判断します。

乳がんの骨転移は頚椎や胸椎、腰椎、骨盤骨、肋骨、胸骨、手足の骨(四肢骨)、頭蓋骨などに多く発生します。とくに頚椎や胸椎、腰椎に転移した場合は脊髄ががんによって圧迫されるため強い痛みを感じたり、神経が麻痺することがあります。また、普通ならば骨折することのないような弱い衝撃でも骨折してしまうことがあります。ビスホスホネート製剤(ゾレドロン酸やパミドロネート)をホルモン剤や抗がん剤と併用することによって疼痛を抑えたり、骨折の頻度を減らすことができます。

骨の転移(転移性骨腫瘍)部位に対して放射線をかけることで痛みが緩和されたり、もろくなった骨を安定化させ骨折が予防できたり、神経症状が改善されたりします。

乳がんの脳転移に対する放射線治療では、頭痛や吐き気、嘔吐、ふらつき、歩行困難、視力の異常などの症状緩和が目的となります。転移は脳の中のどこにでも起こる可能性があり、大きさや数も様々ですから、治療法の選択肢もいくつかあります。

全脳照射は脳全体に放射線をかける治療法で脳のいろいろな所に転移がある場合などに行います。手術で腫瘍を摘出した後に放射線を照射する方法もあります。また、リニアック装置やガンマナイフによって多方向から放射線を集中してかける治療法も行われています。

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