認定看護師としての役割

『手術』という特殊性の高い分野で、認定看護師の役割である実践・指導・相談を行っています。患者さんやご家族にとって大きなイベントである手術を、安全に安心して受けられることを実現するために活動を行っています。その人が手術を受けると決まった時から、身体的、心理的な準備が進められ、「無事に」手術が終わり、自宅に戻られることを目指しています。ただ、これは決して自分一人だけの力では実現せず、そして医師だけ、看護師だけの力でもうまくいきません。手術室の看護師が力を発揮できるように教育・指導を行いながら、医師を含む多職種との調整も行いながら、一つひとつの手術が安全に行われることを目指しています。手術室での看護は看護学校でも教えられることが少なく、新人看護師や手術室以外の看護師もその内容はあまり知られていないのが現状です。手術看護、周術期看護の内容や、楽しさややりがいを周囲に伝えていくことも役割の一つであり、実践や指導場面において常に意識していることです。

認定看護師を目指したきっかけ

入職して数年経ち業務を一通り習得していく中で、日々手術室に迎え入れている患者さんに「本当に良い看護、必要な看護ができているのか」と考えるようになりました。経験だけでなく知識や根拠に基づいて、「その人に合った正しい看護を提供できるようにしたい」と考えたことがきっかけです。また、術後の患者さんのもとを訪問した際に、私の存在や私が行った行為を非常に印象的に覚えていた方がおられ、「手術室看護師」の存在や価値を改めて考えることができました。そこから、さらにその価値を高めていく必要があると考えるようにもなりました。
また、学会や研修に参加するなかで、他施設の活動に触れる機会も得ました。このようなことから、手術看護、周術期看護を深く、幅広く理解し、それを実践できるようになり、質の高い看護を行っていきたいと考えたことから認定看護師取得を目指しました。

やりがいを感じる時は?

術前の問題に対して準備を行い、無事に手術が終わったときにやりがいを感じます。手術室で働くようになり、この「無事に」「何事もなく」手術がおわることが当たり前ではなく、多職種が責任をもって役割を担うことや、チームとして連携したうえに成り立つことを体感しました。こういったことから、病院や私たちを信頼し手術を受けられる方に対して、「無事に」手術が終わったときにチームとしてやりがいを感じます。大変な手術でも、医師やチームメンバーから「あなたがいてくれて良かった」などの声があると頑張ってよかったと思えます。
また、術直後や術後の患者さんからの言葉からも活力を与えてもらっています。「ありがとう」「思ったより何ともなかった」「そばにいてくれて良かった」そんな言葉をいただくと自分の行った看護が役に立ったのだな、と思えることができホッと心を落ち着かせることができます。また、手術室の看護は看護学校で教えられることは少なく、新人職員は1から業務を覚えることになります。指導や経験によりスタッフが成長していく姿を見たときにもやりがいを感じます。

府中病院での主な活動

日々の業務において実践、指導を行うとともに、スタッフや多職種からの相談対応を行っています。また、新たな術式が導入となる際も、スタッフと協力しながら安全に手術が行われるように手順の整備などを行っています。手術室は侵襲的な処置が多く行われ、一つの見落としや不注意が大きな事故につながる状況にあります。医療安全や感染管理についても、学会や研修で知識を得て、自施設で導入すべきシステムの構築や、スタッフへの教育、手順の見直しなどを進めています。
部署外でも院内研修を行っており、気管内挿管の介助など、専門性が高く、手術室で実施頻度が高い技術について教育を行っています。今年度は手術を受ける患者さんの術前や術後の管理に役立つ研修を企画しています。

今後の目標

患者さんの高齢化や技術、機器の進歩により手術はより複雑なものとなってきています。そのような状況でも、さらに安全性が求められるようになるため、部署内での教育を継続して行う必要があります。さらに、「手術看護」は手術前後も含む「周術期看護」とその役割が広がっており、より術前、術後に目を向け、広く患者さんを支援していくことが求められていきます。今後は、病棟や外来との連携を強化し、手術を受ける方の支援を強化していきたいです。手術を受ける方からは、よく「おまかせします」との声をかけていただきます。そうして私たちを信頼してくれる方へ必要な看護が行われるよう、さらに知識と経験を積み、手術を受けられる患者さんやご家族の方々を支援できるようにしたいと思っています。