放射線治療センターのご紹介
放射線治療は、手術、化学療法とならぶ悪性腫瘍に対する三大治療法の一つです。放射線治療には機能と形態の温存が可能ながん局所治療法であるという大きな特徴があります。がん患者さんの半数が救命できるようになった現在、命を長らえるだけでなく社会復帰の可能なQOL(quality of life)の高い治療法への社会的要請が強まっています。放射線治療はまさに時代の要求するがん治療法です。また、がんの局所療法であるため、全身的な影響が少なく、高齢者にも適応できる患者さんにやさしいがん治療法です。放射線治療の目的にはがんを治す根治照射、がんの痛みを取る緩和照射、がんの再発を抑える予防照射などがあります。
現在、常勤医師1人、非常勤医師2人の体制で月曜日~金曜日に予約外来を行っております。アットホームな雰囲気で患者さんの心に寄り添った丁寧なケアを行えることを目標にしております。
紹介は院外からも広く受け付けております。高度放射線治療や小線源治療など特殊な放射線治療が必要な場合は近畿大学病院と連携を取り対応しております。
放射線治療について
放射線治療の目的にはがんを治す根治照射、がんの痛みを取る緩和照射、がんの再発を抑える予防照射などがあります。
放射線治療の対象となる主ながんは、脳腫瘍、悪性リンパ腫、頭頸部腫瘍、食道がん、肺がん、乳がん、肝胆膵腫瘍、子宮頚がん、前立腺がん、骨腫瘍、肉腫など頭から下肢まで身体中ほぼすべての腫瘍であるといえます。
(図1)
(図2)
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(図1)
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■ 全身照射(TBI)
当院は、血液疾患に対して造血幹細胞移植が行われており、前処置にあたる全身照射(TBI)も実施しています。
■ 画像誘導放射線治療(IGRT)
当院はIGRTを行っています。
従来の放射線治療は皮膚に直接、印を書いて位置合わせしています。これは、皮膚表面の印だけを頼りに行う放射線治療で、身体の内部の様子や治療中の身体の位置関係がわかりません。
IGRTは、照射直前に画像情報を取得して、治療計画で用いたCT画像と照合します。そして、位置のズレを補正し、より正確な放射線治療を行う方法です。
CT画像との位置合わせ
■ 悪性リンパ腫に対する放射線治療(緩和照射)
放射線治療前
放射線治療線量分布
1.8Gy
25回照射
合計 45Gy
1.8Gy
25回照射
合計 45Gy
放射線治療後
■ 食道がんに対して化学療法併用放射線治療
放射線治療前
放射線治療線量分布
2Gy
30回照射
合計 60Gy
治療終了
8カ月後
2Gy
30回照射
合計 60Gy
治療終了
8カ月後
放射線治療後
乳がんの夜間照射
乳がん術後照射における放射線治療は平均25~30回の通院が必要です。しかし、お仕事などされている方は「診療時間内の通院は難しい」「仕事が休めない」という方が多いのが現状です。そこで当院は希望される患者さんには夜間帯(17時~19時)にて毎日の放射線治療を対応させていただきます。
ご希望の方は一度ご相談ください。
受診・治療の流れ
放射線治療患者さん「紹介」から「初診」までの流れ
※1採血・画像データ、組織診の結果、過去の照射記録など
※2乳がんの患者さんのみ
- 紹介施設より府中病院「地域医療連携室」へ電話連絡
- 初診日を決定し、放射線治療診察予約受付表をFAXにて返信
- 予約申込書と診療情報提供書をホームページよりダウンロード後、記入し「地域医療連携室」へFAX
- 初診日当日、必要書類を持って府中病院へ来院
放射線治療の流れ
初診から治療開始まで約1週間~2週間かかりますが、症例・症状に応じて対応させていただきます。
1.初診
医師が診察します。
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2.治療計画用CT撮影
放射線技師が治療計画用CTを撮影します。
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3.治療計画
医師と医学物理士が治療計画をたてます。
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4.看護師によるオリエンテーション
初回治療前に看護師より、パンフレットを使用して治療の流れや日常生活の注意事項、放射線治療での副作用やセルフケア支援について説明しています。
がんによる精神的ショックや放射線治療による不安がある患者さんに対し、訴えを傾聴し精神的サポートをしています。
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5.放射線治療照射
照射のための位置合わせと装置の操作は、放射線技師が行っています。
府中病院ではリニアック室内まで看護師が付き添っています。また、女性の患者さんに対しては女性スタッフが対応しますので安心して治療が受けられる体制を保っています。
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6.再診
医師が診察します。
診察日
曜日 | 対応時間 | |
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診察日時 | 月~金 | 9時~16時 |
照射日時 | 月~金 | 9時~16時30分 |
治療計画CT撮影日 | 月・火・水・木・金 | 13時30分~ |
Q&A
スタッフ紹介
学歴
- 1975-1981年 京都大学医学部医学科、卒業
- 1985-1989年 京都大学大学院医学研究科博士過程、医学博士
職歴・研究歴
- 1981-1985年 京都市立病院、放射線科研修医、医員
- 1989年 京都大学医学部附属病院、放射線部助手
- 1990-1991年 米国Kentucky大学、放射線医学科研究員
- 1993年 京都大学医学部、放射線医学講座、講師
- 1995年 京都大学大学院医学研究科、放射線医学講座、助教授
- 1998年 近畿大学医学部放射線医学教室、主任教授
- 2005年 近畿大学医学部放射線医学教室・放射線腫瘍学部門、主任教授
- 2009-2022年 近畿大学病院、がんセンター長
- 2022年 近畿大学医学部、図書館長
- 2023年 近畿大学退職、近畿大学名誉教授
- 2023年 生長会 府中病院、放射線センター長
専門医・名誉会員など
- 日本放射線腫瘍学会/日本医学放射線学会 放射線治療専門医
- 日本食道学会・名誉会員
- 日本肺癌学会・特別会員
- 日本癌治療学会・名誉会員
- 日本頭頸部癌学会・名誉会員
非常勤医師 | 資格 |
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福田 隼己 | - |
MRIセンター・画像診断部
画像診断やIVR(画像下治療)を安全・迅速に遂行することにより患者さんの診断治療に貢献します。
病院内の各診療科や地域医療機関からの依頼を受けて、画像診断やIVR(画像下治療)を行っています。
画像診断では、CT、MRI、核医学などの放射線機器を用いた画像検査の実施と読影診断レポートの作成を行っており、病気の診断、治療方針決定に寄与しています。地域の医療機関からの画像検査の依頼も広く受け付けています。
IVR(画像下治療;血管造影を用いた低侵襲治療)に関しては、主に肝がんに対する肝動脈化学塞栓療法を行っています。
診療内容
- MRI:3テスラ装置2台(Siemens社製Skyra 3T, Philips社製Achieva 3T)
- CT:64列(Philips社製),128列(Siemens社製)
- 血管造影:肝動脈化学塞栓術(TACE),など
- RI(シンチ)
- TV撮影:消化管造影,など
- 一般X線撮影,など
■ 脳動脈瘤
MRA(非造影TOF法)
- 頭部領域では、非造影で、小さな脳動脈瘤を良好に描出できます。
■ 聴神経鞘腫のMR cisternography
3D T2強調像(1mm厚)
反転像
- MR cisternographyでは、非造影で、小さな聴神経腫瘍(本症例では径3mm大)を良好に描出できます。
■ 肝細胞がんのプリモビスト造影MRI(脂肪抑制dynamic MRI)
動脈相
肝細胞相
- プリモビストは、肝細胞に取り込まれる肝細胞特異性造影剤で、肝細胞機能を反映します。
- 本症例では、少量(5~10 ml)の造影剤で、肝細胞がんが明瞭に描出されています。動脈相では早期濃染しています。腫瘍部は肝細胞機能を持たないため、肝細胞相では造影欠損像として描出されています。
- 肝細胞がんの検出能は、造影MRIの方が造影CTよりも優れています。
■ 膵分枝型 IPMNのMRCP像
T2強調像(3mm厚、高分解能)
- MRCP像にて、主膵管は軽度拡張し、3個の多房性嚢胞性病変と膵管分枝との連続性が描出されています。
- 高分解能のthin slice T2強調像において、ブドウの房状の多房性嚢胞の性状構造や膵管との連続性が明瞭に描出されており、分枝型IPMNと診断できます。
■ 胆嚢結石・腺筋腫症・膵分離症
MRCP像(2D)
T2強調像(3mm厚)
- 主膵管は副乳頭に開口しており、膵分離症と考えられます(矢頭)。
- 胆嚢壁内にRASと思われる小嚢胞が多数見られ(矢印)、胆嚢腺筋腫症と考えられます。
- また、胆嚢内に結石も認められます(矢印)。
■ 前立腺がん(移行域内)
拡散強調像(b=1800)
T2強調像
- 移行域の内部に存在する小さな前立腺がんが、拡散強調像で高信号域として明瞭に描出されています。
- 前立腺がんはCTなどでは描出が難しく、特に内腺領域の前立腺がんは診断困難ですが、MRIの拡散強調像が描出能に優れています。
■ 半月板損傷
T2*強調像
- 半月板の後角に、高信号の断裂が認められます。
- 関節軟骨も明瞭に描出されています。
■ 下肢動脈造影MRA
- 当院独自に考案した手法 1) により、少量の造影剤(10~20 ml)の静注で、短時間で腹部から足部まで良好な動脈像が得られます。
- 動脈狭窄部位や細い側副血管も明瞭に描出されています。
- ASO(閉塞性動脈硬化症)などの下肢動脈の診断には、本法の造影MRAの方が非造影MRAよりも短時間で良好な画像が得られ、造影MRAが有用です。
1) Kita M. et al. JMRI. 2001: 319-328
■ 冠動脈造影CTA
- ヨード造影剤(60~90 ml)の静注が必要ですが、心臓カテーテル検査よりも低侵襲、短時間で検査可能です。
- 冠動脈が良好に造影されています。