~健康で自分らしい生活のための作業療法的発想法~

みなさんこんにちは。
府中病院 作業療法室です。

みなさんは健康で自分らしい生活を送れていますか?

わたしたち府中病院の作業療法士(Occupational Therapist:OT「作業」の問題に日々取り組んでいます。

みなさんは「作業」とはなにかご存知ですか?

実は、健康で自分らしい生活のための大切な要素の一つが「作業」なのです。

この記事では、

作業療法士として就職を考えておられる方

健康で自分らしい生活のために「作業」について知りたいという方

に向けて

①府中病院の作業療法士はどんな仕事をしているのか

②健康的で自分らしい生活のための作業療法士的発想法

について詳しく解説をしていきます。

みなさまの健康で自分らしい生活のために府中病院の作業療法士を活用していただくヒントになれば幸いです。

Ⅰ.府中病院の作業療法士はどんな仕事をしているの?

1)作業療法士は作業(生活行為)の専門家

「作業」って一体なんのことでしょう?

「作業」とは「生活行為」のことです。

具体的には

  • 身の回りのこと
  • 家事
  • 仕事
  • 余暇
  • 地域活動

などを指します。

みなさんは朝起きてから、寝るまでにどのような作業(生活行為)を行っていますか?

  • 朝ハミガキをする
  • 朝食を食べる
  • 車を運転する
  • 仕事をする
  • 友人と食事する など

一日の生活はたくさんの作業(生活行為)で成り立っており、その内容は十人十色です。

(日本作業療法士協会ホームページより抜粋)

このような作業(生活行為)の問題に取り組んでいるのが作業療法士です。

<日本作業療法士協会による作業療法の定義>

 

作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、

医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる

作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。

作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。

 

(日本作業療法士協会ホームページより抜粋)

2)作業(生活行為)は健康と幸福に大きく影響する

私たちの生活は

その人にとって意味のある生活行為の連続から成り立っていて、その結果から満足感や充足感を得て健康であると実感しています。

作業(生活行為)はさまざまな要因によって妨げられてしまいます。

作業(生活行為)が健康に及ぼす影響は「コロナ禍」を思い出してもらうと分かりやすいでしょう。

  
「いつも行っていたグラウンドゴルフの集まりが中止になった」
「孫と一緒に旅行にいくことが少なくなった」
  
コロナ禍によって、作業(生活行為)が思うように出来ず、生活が不活発になり、ストレスが溜まったという人も多いのではないでしょうか?
このように作業(生活行為)の問題は健康に影響を及ぼします。
  
ではどのようにすれば、健康で自分らしい生活に繋がるのでしょうか?
  
次に健康で自分らしい生活のための大切なポイントについて詳しく解説してきます。

Ⅱ.意味のある作業(生活行為)に取り組もう!

1)意味のある作業(生活行為)とは?

健康で自分らしい生活のためには

「意味のある作業(生活行為)」を明確にし、しっかり取り組んでいく
  
ことが大切です。
  

意味のある作業(生活行為)とは「生きがい」「役割」「楽しみ」となる活動と言い換えると分かりやすいかもしれません。

以下は意味ある作業(生活行為)の一例です。

  • 地域の「見守り隊」で小学生の安全をまもってあげたい
  • ヘルシーな料理を学んで、夫の健康を支えてあげたい
  • 好きなアイドルのライブにいくのが楽しみ
みなさんの「生きがい」「役割」「楽しみ」となる活動にはどんなものがありますか?
一度考えていただくことをおすすめします。

2)意味のある作業(生活行為)を支援する作業療法士

「意味のある作業(生活行為)」はどうして、わたしたちの生活の健康や幸福を高めるのでしょうか?

たとえば意味のある作業(生活行為)が地域の小学生の登下校を見守る「見守り隊」という活動だったとしましょう。

「見守り隊」という作業(生活行為)があるおかげで

  • 生活リズムを整え、程よい運動の機会を提供してくれるでしょう。
  • 外に出かけるというモチベーションとしても作用してくれるでしょう。
  • 地域の保護者や小学生から感謝されれば、大きな喜をもたらしてくれるでしょう。

このように意味ある作業(生活行為)を意識することは、私たちの健康やじぶんらしい生活のための鍵だといえます。

3)入院中から意味のある作業(生活行為)を考える

そして府中病院の作業療法士はご入院中から意味のある作業(生活行為)を聞き取ることから始まります。

下の図は、厚生労働省が示す高齢者のリハビリテーションのイメージです。

【厚生労働省HPより抜粋】https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/16/backdata/01-04-03-25.html

リハビリテーションの目的はその人らしくいきいきとした生活ができることです。

リハビリテーションとは、障害のある子供や成人・高齢 者とその家族が、住み慣れたところで、一生安全に、その人らしくいきいきとした生活ができるよう、保健・医療・福 祉・介護及び地域住民を含め生活にかかわるあらゆる 人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し 合って行なう活動のすべてをいいます。

(地域リハビリテーション定義 一部改変)

ご入院当初は立つ、歩くなど機能回復訓練や身の回りの活動の練習比率が多くはなりますが、退院後の生活を活発にするためには、地域での役割や生きがいといった社会参加を意識していただくことが重要です。

府中病院の作業療法士は退院後の生活を見据えて、作業(生活行為)の方向性を維持できるのか一緒に考え、自信をもって行えるようサポートしていきます。

いわば作業療法士は作業(生活行為)のコーチ役とも言えるでしょう。

Ⅲ.作業(生活行為)ができるための4つのポイント

府中病院の作業療法士は、意味の作業(生活行為)ができるために、具体的にはどのような関わりを行っているのでしょうか?

1)身体能力・技能を高め、環境を整えることで作業を出来るようにする

作業(生活行為)は

  • 体が動きづらかったり
  • 技能が足りなかったり
  • 環境が整っていなかったり

するとうまく行えません。

このような場合

作業療法士は体の動きを回復させる練習、日常生活の動きを反復して、技能を習得するための練習、そして環境を整えるアプローチを行います。

作業療法のユニークなところは作業(生活行為)に直接評価・介入するところです。

なぜなら生活行為の課題を見つけるためには

実際に作業(生活行為)をしてもらうことが1番の近道だからです。

たとえば実際に料理をしてもらうと

  • このフライパンでは重すぎて落としてしまう。さらに力をつけましょう。
  • 細かな包丁の操作がむずかしければ皮むき器(ピーラー)を使いましょう。
  • 立っていることが辛い場合は、椅子を使いましょう。

など生活の課題や難しい工程の発見に繋がります

このように作業を基盤とした介入を大切にしている点が府中病院の作業療法士の特徴です。

2)生活全体のバランスを整えることで作業を出来るようにする

作業(生活行為)が行えないのは目に見えない要素が関係していることがあります。

たとえば、昼間寝てばかりで、夜眠れない。そのため、朝ふらついてしまう。

このように生活全体の習慣のバランスが崩れていても作業(生活行為)がうまくできなくなります。

他には、頑張りすぎてうまくストレスを解消出来ないことが原因で身体や心に悪影響がでて作業(生活行為)に支障が出てしまいます。

このように、日中に活動できる時間を作ることや、適切なストレス対処法を一緒に考え生活のバランスを整えることも作業療法士の役割の一つです。

3)マネジメントを行って作業を行えるようにする

作業(生活行為)はご家族の理解や協力関係、そして社会資源の活用も大きく影響します。

作業療法士は直接の訓練だけでなく、チーム全体に働きかけ、マネジメントすることも仕事です。

例えば

「〇〇さんの大切な生活行為は地域の見守り隊です」

「横断歩道のところまでは友人といっしょに歩行器をレンタルすれば可能になるでしょう」

このように意味のある作業(生活行為)が行えるように、周囲に協力や理解を得られるように関わります。

4)意味のある作業(生活行為)を発掘することで作業を行えるようにする

作業療法士はみなさんの「意味のある作業(生活行為)」を一緒に考え、発掘していくことをお手伝いします。

これは認知症絵カード評価法というカードです。
たとえ認知症であったとしても、ご自身の意味のある作業(生活行為)を発見するために分かりやすい線画と大きな文字で工夫がされています。

井口ら(2011)認知症高齢者の絵カード評価法の信頼性と妥当性の検討.作業療法

そして絵カードを「とても重要」「あまり重要でない」「全く重要でない」の3つに仕分けてもらうことで重要な作業(生活行為)を特定するヒントとして活用しています。

このようにみなさんの大切な価値観を「掘り起こす」ことも作業療法士の大事な役割です。

Ⅳ 「できる」を探し、育てる作業療法的発想法

いかがだったでしょうか?

府中病院の作業療法士は、みなさんの十人十色の意味のある作業(生活行為)が行えるようにさまざまな方法で支援しています。

 作業療法士のキーとなる発想法・・・それは
「できる」探し、育てるという考え方です。
  

ひとたび病気やケガに見舞われると悪いところばかりが目に付き自信を失いやすくなります。

自信はリハビリテーションの効果を左右する重要なポイントです。

もちろん「ネガティブ」な部分にはしっかり対処しつつ「ポジティブ」な「できる」部分も意識してみましょう。

人間は良いところや活用できるところのほうが遥かに大きいのです。

たとえば片手であってもリンゴの皮をむくことや、料理をすることも工夫や練習次第では可能です。

府中病院の作業療法士は

みなさまの意味のある作業(生活行為)の「できる」を探し、育てることで健康で自分らしい生活をサポートしてきたいと考えています。

作業療法士を目指しておられる方は、ぜひ生長会・悠人会リハビリテーション部門の仲間として、私たちと一緒に地域の皆さまの幸せで、自分らしい生活のため一緒に働きませんか?

最後まで読んでいただいてありがとうございました。