薬には、飲み薬、錠剤、シロップ、カプセル、塗り薬、注射薬など様々な種類の薬があります。今回は特に飲み薬について、Q&A方式で解説します。

Q1. なぜ “薬” が必要なのですか?

人には病気や怪我を乗り切るために、本来持っている「自然治癒力」があり、病気や怪我から回復する時に働きます。しかし、「自然治癒力」だけでは回復できない時もあります。薬は病気の原因を取り除いたり、「自然治癒力」を助け、病気や怪我が早く治るようにしたり、重くならないようにします。

元気な時は自然治癒力のおかげでウイルスなどを寄せ付けません。

体が弱った時は、自然治癒力だけでは回復ができないため、薬の力を借ります。

Q2. 飲んだ薬は体の中でどのように運ばれていくのですか?

  • 飲んだ薬は、口から食道を通って胃や腸で溶け、主に小腸で吸収され、小腸から血液中に入ります(吸収)
  • 吸収された成分は、肝臓で一部が分解され、残りの成分が血液中に入って心臓に運ばれます。
  • 心臓のポンプの力で、頭のてっぺんから足の爪先まで血液と一緒に全身を巡ります(分布)
  • そして薬は病巣や患部に届き、効き目を現わします。
  • 血液中の薬は肝臓を通るたびにどんどん分解され(代謝)、腎臓の働きで尿として、大腸からは便として体外へ追い出されます(排泄)

Q3. 薬によって食前・食後・食間と飲む時間が違うのはなぜですか?

胃の内容物によって薬の吸収が変化する場合があったり、空腹時に飲むと胃に負担がかかる場合があったりするからです。飲み方にはそれぞれ意味があります。

胃の中に何もない空っぽの状態、食前です。この場合は食べ物の影響を受けないため、薬は速く吸収され効果も速く現れます。その代わり胃を刺激し胃を荒らしやすくなります。

食後で食事が終わった後、胃の中に食べ物が多くある状態です。食事を終えて30分が過ぎた頃になると、胃の中の食べ物も少なくなり、薬による胃への刺激が少ない状態になります。

薬が十分効果を発揮するには、内服後、薬が吸収され血液中の濃度が一定に保たれることが大事です。薬により効果が発揮する飲み方が決められています。

参考

薬を入れている袋に、飲み方が記載されています。その言葉の説明をします。

食事をするおよそ30分前に飲みます。
吐き気止めや食欲を出す薬、胃に食べ物が入っていない方が吸収や効果が良い薬、漢方薬などがあります。
  
※参考として、「食直前」という飲み方もあります。食直前は食事の直前に飲みます。糖の吸収を抑えたり、食後の血糖上昇を抑える糖尿病の薬は食事の前10分以内に飲みます。
食事が終わった後、30分以内に飲みます。
多くの薬は食後に飲みます。胃粘膜を刺激するため胃腸障害を起こしやすい薬などは必ず食後に飲む必要があります。
食事と食事の間に飲むことで、食事の最中に飲むことではありません。前の食事から2時間くらい後に飲みます。
胃に食べ物がない方が吸収や効果がいい薬などは食間に飲みます。漢方薬などもあります。(漢方薬は食前に飲むこともあります)
寝るおよそ30分前に飲みます。
食前や食後の場合と違って、胃の中の状態とは関係ありません。睡眠薬や便秘の薬などがあります。
症状を一旦抑えるため、症状が出た時に飲みます。
頭痛、腹痛、けがなど痛みがある時や熱がある時などに飲みます。

この他に時間毎(例:6時間毎に服用、10時・20時に服用など)に服用する飲み方があり、これは抗生物質の薬などがあります。

Q4. 薬を飲み忘れた時はどうしたらいいですか?

飲んだかどうかがわからない時は、慌てて飲まず、次回から飲んでください。一方、確実に飲んでいない場合は、薬の種類やいつ気がついたかで対処が異なるため、医師・薬剤師に相談してください。自己判断で2回分を一度に飲むことはしないでください。

参考
下図は薬の「血中濃度」を表しています。「血中濃度」とは血液に溶けている薬の濃度のことを言います。
「血中濃度」によって、薬の効き目の現れ方が決まります。
  • 縦軸 ・・・血中濃度の高低を表しています。
  • 横軸 ・・・薬を飲む時間、ここでは1日3回 朝・昼・夜と表示しています。
  • 灰色の部分 ・・・薬の量が少なすぎて効き目が現れない範囲
  • 青色の部分 ・・・薬の量がちょうど良くて効き目が現れる範囲
  • オレンジ色の部分 ・・・薬の量が多すぎて危険な範囲
グラフの解説
【1日3回きちんと薬を飲んだ場合】グラフの青い線について
  • 薬は、胃や小腸で溶けて主に小腸から吸収されて血液中に入り、効き目が現れるちょうど良い範囲(青色の部分)に入ります。お昼に近づいて血液中の薬の濃度が低くなり、効き目が現れない範囲(灰色の部分)に下がってきます。
  • そこで、お昼に薬を飲むとまたちょうど良い薬の濃度になります。
  • 夜に薬を飲みます。
  • このように、規則正しく飲むと、血液中の薬の濃度が常にこの図の青色の部分、つまり安全に効き目が現れる範囲に入っていることがわかります。
※ 薬によって使用回数・使用時間・使用量が決められています。それは、「効き目が現れる範囲」を保つためです。薬を使用する時は、回数・時間・量を正しく守ることが大切です。
  
【昼忘れて夜2回分薬を飲んだ場合】グラフの赤い点線について
  • 昼に飲み忘れたために薬の血中濃度が低くなっている状態です。夜に飲み忘れていることに気づき、2回分飲むと図のように血液中の薬の濃度が急に高くなり、危険な範囲になってしまいます。そうすると、薬によっては、めまいや吐き気などの副作用が出る場合があり危険です。一度に2回分飲まないでください。

引用:くすりの使用適正協議会

Q5. 小学校の高学年や中学生ともなると大人と同じくらい大きい子供もいますが、大人の量を飲ませてもいいですか?

自己判断で大人の量を飲ませないでください。薬の飲む量は体重や年齢によって決められています。子供は体が大きくても、肝臓の機能が未発達で薬の処理能力が小さいので大人の量を飲むと効きすぎることがあります。

Q6. 処方された薬が残っていますが、症状が良くなったので飲むのを止めていいですか?

診察を受けて処方された薬は、症状が良くなっても自己判断で飲むのを止めてはいけません。
  
例えば…
  • 抗生物質の場合、症状が良くなったようにみえても体の中では細菌が完全に無くなっていない場合もあります。その場合、症状がぶり返したりする可能性もあります。
  • 医師から「痛みがなくなったら飲まなくてもいいよ」などと言われている場合はその指示に従ってください。

Q7. 薬の飲み合わせとは何ですか?また、どのような影響がありますか?

薬の中には一緒に飲んではいけない薬の組み合わせや、一緒に飲んではいけない飲食物があります。その場合、主作用が強く出たり、反対に弱くなったりします。また、副作用が出る場合もあります。
  
【薬と薬の飲み合わせ】
2つ以上の薬を併用すると、その種類によってお互いに影響し、効かなくなったり、効きすぎることがあります。
それによって、期待される作用が現れにくくなったり、思わぬ副作用が現れたりすることで、適切な診療の妨げになることがあります。
病院にかかるとき、ドラッグストア等で薬を買うときには、今使っている薬を必ず医師や薬剤師などに伝えましょう。
  
【薬と飲食物の飲み合わせの例】
下表に記載されているような、薬と飲食物での飲み合わせがありますので注意が必要です。
参考:薬の正しい飲み方
飲み合わせの例について説明しましたが、基本的には飲み薬は水で飲むことを大前提に作られています。
基本的なことですが、意外に守られていないことがあるので「薬の正しい飲み方」のおさらいです。
  
薬の正しい飲み方は① コップ1杯の量の、② 水かぬるま湯で、③ そのまま(噛んだり、カプセルを外したりしないで)、飲みましょう。
少量の飲み物では喉や食道につかえたり、水かぬるま湯以外の飲み物には薬と反応したり、噛んだり、カプセルを外して飲むと十分に吸収されなかったりして、本来の効き目が現れないことがあります。ルールを守れば本来の効き目が期待できます。

Q8. 副作用はどのようなことが原因で起こりますか?

副作用が起こる原因には、大きく分けて5つあります。
  1. 薬の成分が持つもともとの性質
    例えばアスピリンに代表される解熱鎮痛薬では、もともと胃腸障害、腎障害が起こりやすい性質を持っています。
  2. 薬を正しく使用しなかった場合
    例えば子供に大人用の薬を飲ませてしまったり、決められた量以上飲んでしまった場合などがあります。
  3. 使う人の体質または体調
    アレルギー体質の人は薬に対しても過敏に反応することがあります。また、使った人のその時の体調が悪いと、副作用が出てしまうことがあります。特に、副作用を起こしやすい乳幼児や妊婦、高齢者、アレルギー体質の人、肝臓や腎臓に病気がある人は注意が必要です。
  4. 薬と飲食物との相互作用
    薬を服用する時の飲み物や前後にとった食事と相互作用を起こす場合があります。
  5. 薬と薬の相互作用
    いろいろな薬を飲んでいる人は気を付ける必要があります。

Q9. 副作用かな?と思ったらどうしたらいいですか?

薬を飲んだ後、 いつもと異なる症状が現れた場合、すぐに医師または薬剤師に相談しましょう。
  • 薬を飲んで「いつもと違うな」、「なんだか変だな」と思ったら、副作用かもしれませんので、すぐにお家の人や医師または薬剤師に相談してください。
  • 自己判断で飲むのをやめたりしないでください。
  • その薬をやめたり、別の同じ効果がある薬に変更するなどの指示があります。
  • 他にも薬について、わからないこと、疑問に思ったことがあったら、薬剤師に相談してください。
参考:医薬品副作用被害救済制度

薬の副作用で治療を受けている方は医薬品副作用被害救済制度という公的な制度があります。詳細は医薬品医療機器総合機構(PMDA)ホームページをご覧ください。[※注・別のウインドウが開きます]

Q10. 温・冷湿布の使い分けについてどんな時、どちらを使うか教えてください。

湿布には温湿布と冷湿布があり、症状によってどちらを使用するかが変わります。
  • 冷感タイプはうちみ、捻挫など腫れがひどく患部が熱をもっている急性期の症状に使用します。
  • 温感タイプは腰痛や肩こりなど、疲労、血行不良が主な原因と考えられる慢性的な症状に使用します。

間違った使い方をすると、症状の悪化を招くこともありますので、医師や薬剤師の指示のもと使用してください。

Q11. 「OD錠」とはどのような薬ですか?

口腔内崩壊錠のことです。 OD錠は水なしでも速やかに口腔内で崩壊するので、飲むのが苦手な高齢の方にも容易に服用できる錠剤です。
約数秒~30秒で完全に溶けてしまいます。
OD=Oral Disintegrant

Q12. 残った薬の取り扱いについて教えてください

  • 医療用医薬品
    残っている薬は服用しないでください。薬袋に記載されている用法・用量に従って使用すると必ず飲み終わるようになっています。使用期限は薬袋に書かれた日数と考えてください。
  • 一般用医薬品
    通常外箱に使用期限が記載されています。期限の切れている薬は使用しないでください。
参考
  • 説明書や薬袋・箱などは薬を使い終わるまで保管しましょう。
  • 薬の説明書や薬袋・箱には、薬の名前、成分、用法・用量や効能・効果、副作用など大事な記載があります。なお、薬を受け取った日時・薬局の名前を書いておくと、副作用の発生時に役に立ちます。

Q13. 「お薬手帳」を知っていますか?

「お薬手帳」は色々な場所で大切な役目を果たしています。
いつ・どこで・どんなお薬を処方してもらったかを記録しておく手帳です。
  • 病院では・・・
    医師に見せると過去にかかった病気や服用していた薬や、副作用があった場合は、医師に分かってもらえます。
  • 薬局では・・・
    薬を服用する時間や用法・用量、服用上の注意を薬剤師に記入してもらうことによって、薬を正しく用いることができます。
  • 自分では・・・
    薬局で買った薬(一般用医薬品)を服用した時や、サプリメント(健康食品)を飲んだ時は、その商品名や、いつ飲んだかを記入しておくと相互作用による副作用が起きた時に役に立ちます。
薬の副作用やアレルギーが起きたことがある人は、その時のことを書いておくと医師や薬剤師の参考になります。
「お薬手帳」は、被保険者証等と一緒に大事に管理してください。
「お薬手帳」どんなときに必要?
医療機関にかかる時は必ず持って行きましょう!
その他にも・・・
  • 旅行する時
  • 薬局で薬を購入する時
  • 転居して、新しい医療機関を受診する時
  • 休日診療所や救急病院を受診する時
  • 災害にあった時

Q14. いつも同じ薬しか飲まないが「お薬手帳」は必要でしょうか?

いつから服用しているか、継続しているか知るために必要です。
「同じお薬を継続して服用している」ことを記録しておけば、他の医療機関を受診する時や、薬局で薬を購入する時などに、「いつもの薬といっしょに飲んでもよいか」をチェックしてもらえます。

Q15. かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師とは?

いつも行く診療所や薬局のことを、「かかりつけ医院」や「かかりつけ薬局」といいます。
「かかりつけ薬局の薬剤師」に自分の症状や体質を話して、どのような薬が自分には良いのかを相談することが大事です。
「かかりつけの薬局」を持つと、同じ効能目的の薬が他の医療機関から出ているかどうかをチェックして、「重複服用」さらには「薬同士の相互作用」を防いでもらえます。そして、いつも同じ薬局で同じ薬剤師に相談することで、自分の体質に合った薬を調剤するよう気を配られたり、健康管理をしてもらえたりします。

⚠ かかりつけ薬局を決めましょう!

「かかりつけ薬剤師」とは、薬による治療のこと、健康や介護に関することなどに豊富な知識と経験を持ち、患者さんや生活者のニーズに沿った相談に応じることができる薬剤師

参考:くすりの使用適正協議会WEBサイト

この記事は、2023年8月31日に開催された市民公開講座の内容を改変した記事です。

テーマ:これだけは押さえておきたいお薬のこと!
講師:府中病院 薬剤師
場所:府中病院 東館1階 健康教室
  
府中病院では、「市民公開講座」を毎月開催しています。様々なテーマで開催していますので、ぜひ、ご参加ください。ご希望の方には健康チェック(血糖測定・血圧測定)を行っています!